和歌山県有田市 新病院基本構想

有田市立病院
有田市立病院

新市立病院の整備に向けて9月補正予算に設計費用を計上し、基本設計に着手することが報道された。(出所

有田市立病院 概要

許可病床数

一般54床、地域包括ケア99床、感染症4床

診療科名(標榜)

12科
(内科・循環器科・脳神経外科・外科・整形外科・産婦人科・小児科・眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科・麻酔科)

病院機能

  • 救急告示病院
  • 第二種感染症指定医療機関〔令和2(2020)年9月 新型コロナウイルス感染症重点医療機関の指定医療機関〕
  • 災害拠点病院
  • DMAT〔2チーム体制、BCPの策定、周辺市町・消防等との定期的な災害訓練の実施〕
  • 訪問看護ステーション 〔有田川町内 サテライト支所設置〕
  • 認知症疾患医療センター

敷地面積

14,896.763㎡

建物延べ面積

15,017.01㎡

設備概要

手術室(3室)、臨床検査施設、調剤所、給食施設、洗濯施設、分娩施設、新生児入浴施設、化学・殺菌・病理検査施設、研究室、機能訓練室(253㎡)、談話室、浴室、X線装置、64列全身X線CTスキャナ、MRI(1.5テスラ)、超音波診断装置、患者輸送用自動車、自家発電装置、マンモグラフィー、院内PHSハンディーナースコールシステム、オストメイト対応トイレ、電子カルテ

新有田市立病院 基本構想

新病院基本構想作成の背景

  • 現在の有田市立病院は、経年による施設設備の老朽化、汎用性の低さ、度重なる増改築で院内の動線が複雑で非効率な状態であるなど様々な課題
  • 有田保健医療圏唯一の公立病院として、多様化する医療ニーズや少子高齢化、人口減少といった社会情勢等の変化が顕著
  • 将来に向けて安定的、継続的に地域医療を担うことのできる新有田市立病院の整備が必要

医療提供体制・患者の受療動向等

  • 有田医療圏内には5病院が所在し、急性期・回復期・慢性期機能を中心とした医療を担っている現状
  • 患者の受療動向に関して、一般病床については、有田医療圏に隣接する和歌山医療圏等へのアクセスも比較的容易になっており、患者流出が多く見られる
  • 高度急性期医療に関しては、隣接する和歌山医療圏(県立医大附属病院・日本赤十字社和歌山医療センターなど高度急性期機能を担う医療機関が所在する)に大勢を委ねている現状
  • がん・急性心筋梗塞等の疾病に関しては、有田医療圏から他医療圏の医療機関に患者流出
  • 療養病床に関しては、隣接する御坊保健医療圏から患者流入
  • 有田医療圏の2次救急完結率は42.2%
  • 有田医療圏に高度急性期に対応する施設が存在しないという側面もあるが、流出を抑制し二次救急は有田医療圏内で完結できる体制を構築する必要
  • 有田市立病院では、産婦人科常勤医師の退職に伴い令和元(2019)年12月末をもって分娩休止
  • 令和3(2021)年度中には、有田医療圏内で分娩可能施設がなくなることから、地域住民の出産に対する不安の声が大きくなっている状況

新有田市立病院の基本方針

1)公立病院として担う医療機能

有田医療圏における公立病院として担う機能を以下のとおりとし、有田医療圏の地域医療を維持するうえで必要な機能・体制を整備する。

  • 救急告示病院
  • 第二種感染症指定医療機関
  • 災害拠点病院
  • 認知症疾患医療センター(連携型)
  • へき地医療拠点病院

2)救急医療に対する体制の維持・強化

  • 住民が安心して生活できる地域を守っていくため、 救急医療体制を強化し、有田医療圏で発生した二次救急を引き受ける設備機能の充実を図るとともに、三次救急を受け入れる和歌山医療圏等の医療機関とも連携
  • 今後導入される医師の働き方改革(労働時間規制)による影響を考慮し、『特定行為に係る看護師の研修制度修了者』(以下「特定ケア看護師」という。)の養成を推進するなど、医師・特定ケア看護師等によるチームとして救急医療に対応
  • 有田医療圏内の消防署と連携し、救急ワークステーション(救急救命士、予備救急車の配置等)などの整備を図り、迅速かつ安心した救急医療を提供できる体制を構築

3)総合診療と専門診療の融合

  • サブアキュート(在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性増悪した患者)、ポストアキュート(急性期を経過した患者)、回復期等の病床機能を有する場合、特定の疾患・臓器に限定せず幅広い診療を行う「総合診療」などの体制を整備することが必要
  • 高齢者は複数疾患をもつ患者が多いことから、高齢化が進む地域においては、幅広い疾患等への対応も充実する必要
  • 総合診療科と各専門診療科が協働し、専門診療に対しても地域のニーズに対応

4)在宅療養支援病院としての更なる機能充実

  • 今後、有田市及び有田医療圏における高齢者人口の増加に伴い、在宅医療・在宅介護の需要増加予想
  • 切れ目のない在宅医療と在宅介護の提供体制を構築し、地域住民が安心して在宅療養生活を継続していくためには、入院初期からの退院支援、在宅療養中の急変時の入院及びレスパイト入院(介護する家族等が休息をとるための一時的入院)への対応が重要になってくることから、「在宅療養支援病院」としての機能充実を図る
  • 在宅医療の後方支援機能を充実し、地域の医療機関等との連携を図りながら、地域包括ケアシステムを促進

5)在宅医療の充実に合わせて、在宅介護機能の強化

在宅医療の充実に合わせて、訪問看護、通所リハビリテーションなどの在宅介護機能の強化が必要となるため、以下の機能を充実

  • 訪問看護サービス(介護予防サービス・介護サービス)(有田川町内等の訪問看護サービスのサテライト)
  • 訪問リハビリテーションサービス(介護予防サービス・介護サービス)
  • 通所リハビリテーションサービス(介護予防サービス・介護サービス)

6)高齢者人口の増加を見据えて、回復期リハビリテーション機能の充実

  • 地域医療構想を踏まえ、回復期機能を担う病床機能を充実
  • 65歳以上人口が占める割合が高い地域においては、急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療機能を整備する必要
  • 自宅等で療養を行っている患者の受入を行うため、地域包括ケア病棟を設置
  • 急性期を脱し、在宅復帰を目指す途上にある患者のために、回復期リハビリテーション病棟を設置

7)保健・予防医療の充実

  • 地域住民がいつまでも健康な生活がおくれるように健診センターを活用し保健予防活動における支援を実施
  • 地域の関係機関等と連携・協力し、ヘルスプロモーション(人々の健康の維持・増進のための活動)等の健康を支援する環境づくりに寄与
  • 人間ドック・脳ドック、がん検診、特定健診、健康診断(企業健診、生活習慣病予防健診等)、予防注射(インフルエンザ、肺炎球菌ワクチン、小児予防接種)等を実施

病床数は124床

病棟区分病床区分病床数病床機能
急性期一般病棟一般病床40床急性期
感染症病床4床急性期
地域包括ケア病棟一般病床40床回復期
回復期リハビリテーション病棟一般病床40床回復期
124床

外来患者数は270人/日

  • 診療科・専門外来…内科(総合診療科)循環器科、脳神経外科、外科、整形外科、産婦人科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、皮膚科、麻酔科、リハビリテーション科、専門外来(発達相談外来)(遺伝外来)(睡眠時無呼吸外来)(補聴器外来)(もの忘れ外来)
  • 外来機能・部門…外来診療部門、内視鏡検査、放射線検査、臨床検査、外来リハビリテーション、服薬指導(薬剤室)、栄養指導(管理栄養室)、地域医療連携室、入退院支援センター、認知症疾患医療センター、健診センター、院外処方

新興感染症等の対応(感染症病床)

  • 二種感染症指定医療機関として、感染症病床4床を維持
  • 新興感染症等のまん延時において、感染症病床4床では補えない場合には、1病棟を専用病棟(病床)に一時的に転換し、入院患者を受け入れる体制を検討
  • 新興感染症等の受入に対応するための設備、建物構造等の整備
  • 新興感染症等のまん延時や流行状況に応じて、和歌山県ならびに地域の医療機関等と連携し、地域の感染対策に努める
  • 和歌山県の保健医療計画等に沿って、有田医療圏の新興感染症等の非常時や災害時において地域医療を維持、継続できる体制に努める

分娩への対応

  • 全国的な産婦人科医の不足や今後導入される医師の働き方改革(労働時間規制)により、分娩体制を整備・維持していくことが困難
  • 和歌山県の診療科別医師数の傾向においても小児や産婦人科等の医師数が減少傾向
  • 安全・安心な分娩を行ううえでは、産婦人科、小児科、麻酔科等の専門診療科医師及び専門スタッフならびに設備等が必要
  • ハイリスク等の分娩や新生児への対応を踏まえた場合、和歌山医療圏等の高度急性期を担う医療機関との連携・協力が望ましい
  • 地域の妊産婦を支援するサービスとして、妊婦健診、子宮がん検診、産科セミオープンシステム、助産院との連携、産前産後ケア等を実施

新有田市立病院の建設規模

  • 一般社団法人日本医療福祉建築協会による2011年~2019年調査では、病床規模別において、100床~200床未満における1床あたりの床面積は、73.8㎡~75.8㎡
  • 全国自治体病院のうち、100~150床の病院における1床あたりの延床面積の平均は、83.3㎡
  • ただし、近年の自治体病院には、病床数を削減した病院も多く含まれていることから、実質的な標準値を1床あたり70㎡が妥当
  • 医療施設に併設する通所リハビリテーションや感染症対策、災害拠点病院としての必要な機能を備えるため、新有田市立病院の1床あたりの面積を約80㎡とし、延べ床面積は、約10,000㎡
2011年から2019年 病床規模別・1床当たり平均面積
全国自治体病院の病床数と1床当たり延べ面積 令和元年度:100~150床 平均83.3㎡
開院年度所在地施設名病床数延床面積面積/床
2015年11月新潟県南魚沼市民病院140床12,890.88㎡92.1 ㎡
2015年10月長野県岡谷市民病院295床24,158.00㎡81.9 ㎡
2016年11月岐阜県市立恵那病院199床16,498.00㎡82.9 ㎡
2016年 4月石川県加賀市医療センター300床26,628.55㎡88.8 ㎡
2017年 4月秋田県市立角館総合病院206床16,034.17㎡77.8 ㎡
2018年11月京都府京丹後市立弥栄病院199床15,793.12㎡79.0 ㎡
2019年 1月三重県伊勢市立総合病院300床24,807.00㎡82.7 ㎡
2019年 5月山口県光市立光総合病院210床18,463.64㎡87.9 ㎡
2019年 8月島根県大田市立病院229床18,958.00㎡82.8 ㎡
平均84.0 ㎡

現在地と移転候補地の位置関係

  • 新有田市立病院の建設予定地を決定するにあたっては、現病院の課題を解決することはもちろんのこと、新有田市立病院が果たすべき役割や機能を発揮することができ、安定した病院経営が可能な場所である必要
  • 現在地での建て替えは、入院・外来とも診療に諸問題が生じるとともに効率的な施設を整備することが難しい
  • 運営の制限によりこの間の医業収益が大きく減少することが想定
  • 駐車場用地が点在しており一団の用地として利用ができないなどの問題や津波浸水想定区域であることもデメリット
  • 新有田市立病院の建設地に係る考え方として、早期に新有田市立病院建設の着工が行えるよう、用地取得が不要な市有地とし、交通アクセス、視認性の良い場所など、医療ニーズに対応できる場所に建設することが望ましい
  • 災害拠点病院の要件などを満たし、医療連携を強化するため、和歌山医療圏を主とする他の医療圏の医療機関等とのアクセスが良い立地であることも条件
  • 上記を踏まえ、建設候補地の選定については、必要面積、市内位置関係、医療施設視認性、道路ネットワーク、医療圏連携(アクセス)、公共交通等における利便性、周辺環境、防災と安全性を評価した結果、市の中央に位置し、医療施設としての視認性が高く、患者、スタッフ、物品搬入また救急搬送など様々な車両出入に対応できる場所であり、有田海南道路の整備が完了することで和歌山医療圏との連携にも適したアクセス性を確保できることから、『保田中学校跡地』を建設候補地として選定
有田市立病院 現在地と移転候補地の位置関係

概算事業費

  • 近年の公立病院の整備事例から建築単価を算出、概算事業費は55.2億円程度
  • 今後の市況の変化を注視しつつ、今後策定する基本設計等の各段階において、具体的な整備
    内容を検討し、より詳細な事業費を算出
項目金額算出方法
施設整備設計監理費2.0 億円
新有田市立病院建設費35.0 億円10,000㎡×35万円/㎡(災害拠点病院、感染対策等の機能含めた単価とする)
外構工事費5.0 億円立体駐車場の整備を含む
小計42.0 億円用地費は市有地のため見込まない
機器等整備医療機器整備費10.0 億円医療機器整備費のうち5億円分は、現病院から移設することを想定
情報システム整備費3.0 億円電子カルテシステムを含む医療情報システムの全面的更新を想定
車両整備費0.2 億円通所リハビリテーションに使用する送迎車を含む
小計13.2 億円
合計55.2 億円

整備スケジュール

令和4~5年度中に基本設計・実施設計を終え、令和6年から建設工事。

新有田市立病院の開院は、令和8(2026)年度を目指す。

令和4~5年度中に基本設計・実施設計を終え、令和6年から建設工事。新有田市立病院の開院は、令和8(2026)年度を目指す。

出所:
有田市立病院HP
新有田市立病院基本構想
有田市HP