萩市の中核病院協議会は7日、10月中に開く次回会合で、公営の萩市民病院と民営の都志見(つしみ)病院を統合して中核病院を作る報告書案を提案することを決めた。委員が合意すれば報告書を取りまとめ、田中文夫市長に提出する。
病院概要
萩市民病院
- 病床数…一般100床(HCU1室/個室24室(小児病床4室)/4床室17室/2床室4室(小児病床4室))
- 標榜科目…内科・消化器科・循環器科・神経内科・呼吸器科・小児科・外科・整形外科・放射線科・リハビリテーション科
都志見病院
- 病床数…234床(一般 175床・療養 59床)
- 標榜科目…内科・消化器内科・脳神経内科・呼吸器科・循環器科・外科・消化器外科・整形外科・リウマチ科・皮膚科・脳神経外科・泌尿器科・産婦人科・心臓血管外科・眼科・耳鼻咽喉科・リハビリ科・放射線科・麻酔科・形成外科
萩医療圏における医療機能再編等について
萩医療圏において公的、中核的病院が担うべき医療として、協議会での主な意見として、以下が出ている。
- 最低限必要な医療は堅持してもらいたい
- 萩医療圏の二次救急体制の維持が最優先
- 若い医療従事者が成長できる教育環境が必要
萩医療圏における二次救急の現状
令和2年5月以降、輪番体制の維持が困難となっており、4病院から3病院へ減少している。
現時点では圏域内の病院の努力で、何とか受入れができている状況であるが、このままでは、萩で救急車を呼んでも搬送先が見つからず、助かる命も助からなくなることも、現実として起こりかねない危機的な状況にあるというのが現場の認識である。
これに対し、「圏域内での完結にこだわるのではなく、他の近隣医療圏(山口、長門、益田医療圏)と連携すればいいのではないか」という意見もあるが、二次救急は萩医療圏域内の救急指定病院(4病院)で対応すべきものであり、救急患者を圏域外の医療機関へ搬送することは原則不可とされている。
もちろん例外はあり、萩医療圏で対応が難しい高度な救急救命が必要な救急患者や地理的な要因で他の医療圏と協定を締結している地域である田万川・須佐地域 については、 益田医療圏へ搬送されることとなる。
医療機能再編等のパターンの検討案
これまでの2病院統合案(萩市民病院と都志見病院の統合)では、以下2点を中心に検討が進んできた。
- 地域医療構想調整会議等で検討協議
- 市民から市の財政負担を心配する声
これを踏まえ、中核病院形成検討委員会における仮設定をベースに、罷業日概算額を3つのパターン別にイニシャルコストの総事業費、市の実質負担額、病院負担額を検討した結果、総事業費は97億円~154.3億円となることが試算された。
このうち、市の実質負担は21.7億円~34.9億円、病院負担27.8億円~44.8億円とされる。
また、この統合案に対する意見として、「萩市民病院は毎年赤字決算が続いているが、赤字分を毎年、市が補填しているのではないか」に対し、病院側は「 市から萩市民病院への繰出は基準に基づくものであり、赤字額は市からの繰出金とは異なるという認識を示している。
公的病院が担う不採算医療に対する市の繰出金(基準)
公的医療機関は、診療報酬上の収益に結びつかない、いわゆる不採算な事業に対しても医療を提供する役割を担っている。例を挙げると、救急医療負担金、へき地医療負担金、小児医療負担金などである。
これらの負担金は病院会計が黒字・赤字に関わらず基準に沿って支出(交付税措置あり)されるものであり、萩市民病院決算額の繰出金総額(令和元年度)としては約5.9億円となっているが、国からの交付金を含めると実質約2.5億円の負担で済んでいることになる。
現在の市民病院への繰出金(令和元年度実績)
- 繰出金(A) 約5.9億円
- 交付税(B) 約3.4億円
- 実質負担(A)-(B) 約2.5億円
【参考】病院事業について総務省の繰出基準に定められている項目
- 病院の建設改良に要する経費
- へき地医療の確保に要する経費
- 不採算地区病院の運営に要する経費
- 不採算地区に所在する中核的な病院の機能の維持に要する経費
- 結核医療に要する経費
- 精神医療に要する経費
- 感染症医療に要する経費
- リハビリテーション医療に要する経費
- 周産期医療に要する経費
- 小児医療に要する経費
- 救急医療の確保に要する経費
- 高度医療に要する経費
- 公立病院附属看護師養成所の運営に要する経費
- 院内保育所の運営に要する経費
- 公立病院附属診療所の運営に要する経費
- 保健衛生行政事務に要する経費
- 医師及び看護師等の研究研修に要する経費
- 保健・医療・福祉の共同研修等に要する経費
- 病院会計に係る共済追加費用の負担に要する経費
- 公立病院改革の推進に要する経費
- 医師確保対策に要する経費
病院運営費に係る市のランニングコスト負担について
中核病院協議会では、統合後の病院の収支について、R1年(2019年)決算値をベースに人口推計による将来の患者数等の医療需要を試算し、見込まれる診療報酬や必要となる費用等を2パターン算定した。
この結果、市内完結率強化かつ既存施設への集約が純損益・キャッシュフロー(CF)ともにプラスとされてるが、既存施設=改修が前提=更にその先の老朽化への対応が必須となる点に留意が必要である。
市内完結率強化 | 経営統合(現状維持) | |
既存施設への集約 | 純損益:+ CF:+ | 純損益:- CF:+ |
新病院への集約 | 純損益: + CF: - | 純損益: - CF: - |
- 機能による2つのケース
- 市外へ流出している患者の受入強化を図る『市内完結率強化』
- 現状に比較して特段の機能向上を見込まない『経営統合(現状維持)』
- 施設の集約方法
- 既存施設への集約パターン(市民病院と都志見病院のどちらかを増改築し、集約する場合)
- 新病院への集約パターン
また、両パターンに対する前提として、現状の334床から250床へ病床を削減し、新たに回復期リハビリテーション病棟を設置するものとしている。
出所:山口県萩市 中核病院形成推進室 中核病院協議会 より
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