沖縄県病院事業局は「県立中部病院将来構想」を公開した。構想では現地建て替え及び適正面積の算出に力点が置かれている。
病床数は現在と同じ559床、1床当たり延べ面積を103.2㎡とし延床面積は57,700㎡。耐震基準を満たさない南病棟への対応や将来的な増床(最大643床、適正延床面積66,500㎡)の用地確保の都合上、現地建て替えが適当としているが、移転による新病院の建設の声も聞こえる。
必要面積の考え方
- 病床数を559床と想定
- 新病院の適正延床面積は57,700㎡(103.2㎡/床)
- 将来的に643床まで増床することを想定した場合、上記①の延床面積は64,570㎡となり、新病院(643床)の適正延床面積は66,500㎡(103.4㎡/床)となる
近年整備された公立病院の面積事例
病院名 | 所在地 | 設立主体 | 設立主体名称 | 災害拠点病院 | 救命救急センター | 敷地面積 | 建築面積 | 延床面積 | 病床数 | 1床あたり延床面積 | |
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● | 沖縄県立中部病院 | 沖縄県うるま市 | 公立 | 沖縄県 | 有 (基幹) | 有 | 40,960㎡ | – | 35,609㎡ | 559床 | 63.7㎡ |
1 | 鹿児島市立病院 | 鹿児島県鹿児島市 | 公立 | 鹿児島市 | 有 (基幹) | 有 | 44,632㎡ | 16,691㎡ | 59,822㎡ | 574床 | 104.2㎡ |
2 | JCHO大阪病院 | 大阪府大阪市 | 公立 | 独立行政法人 地域医療機能推進機構 | 無 | 無 | 19,181㎡ | 6,089㎡ | 51,758㎡ | 565床 | 91.6㎡ |
3 | 香川県立中央病院 | 香川県高松市 | 公立 | 香川県 | 有 (基幹) | 有 | 56,343㎡ | 12,171㎡ | 45,884㎡ | 531床 | 86.4㎡ |
4 | 岩国医療センター | 山口県岩国市 | 公立 | 独立行政法人 国立病院機構 | 有 (地域) | 有 | 36,804㎡ | 7,798㎡ | 40,982㎡ | 530床 | 77.3㎡ |
5 | 仙台市立病院 | 宮城県仙台市 | 公立 | 仙台市 | 有 (地域) | 有 | 34,843㎡ | 11,171㎡ | 57,130㎡ | 525床 | 108.8㎡ |
6 | ⾧崎みなとメディカルセンター | ⾧崎県⾧崎市 | 公立 | 地方独立行政法人 ⾧崎市立病院機構 | 有 (地域) | 無 | 11,018㎡ | 8,216㎡ | 48,721㎡ | 513床 | 95.0㎡ |
7 | 砂川市立病院 | 北海道砂川市 | 公立 | 砂川市 | 有 (地域) | 有 | 19,779㎡ | 14,698㎡ | 48,930㎡ | 506床 | 96.7㎡ |
8 | 埼玉県立がんセンター | 埼玉県北足立郡伊奈町 | 公立 | 埼玉県 | 無 | 無 | 80,581㎡ | 13,888㎡ | 61,939㎡ | 503床 | 123.1㎡ |
9 | 大崎市民病院 | 宮城県大崎市 | 公立 | 大崎市 | 有 (地域) | 有 | 32,188㎡ | 11,740㎡ | 48,435㎡ | 500床 | 96.9㎡ |
10 | 中東遠総合医療センター | 静岡県掛川市 | 公立 | 掛川市・袋井市 病院企業団 | 有 (地域) | 有 | 137,200㎡ | 13,170㎡ | 46,152㎡ | 500床 | 92.3㎡ |
11 | 大阪国際がんセンター | 大阪府大阪市 | 公立 | 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 | 無 | 無 | 12,833㎡ | 6,822㎡ | 68,269㎡ | 500床 | 136.5㎡ |
99.8㎡ |
県立中部病院特有の機能ほか
- 県内の離島・へき地医療を支える拠点病院の役割を担っており、院内に離島支援室(32㎡、兼医師控室)を設置
- 医師の研修・育成においても重要な役割を担っており、この一環として、県立中部病院の初期研修制度の基礎となったハワイ大学との交流促進のため、院内にハワイ大学沖縄事務所(371㎡)を設置し、医師の研修・育成に取り組み
- 以前の研修医寮(782㎡)を研修医執務スペースとして活用しており、新病院での必要面積は約1,185㎡
- 鹿児島市立病院の事例を参考に、新病院の感染対策のために約770㎡の面積を見込み
建替えの背景
- 築40年以上が経過した南病棟は、平成26年の耐震診断調査において基準を満たしていないことが判明し、耐震補強工事を検討したものの未だ耐震化を実現することができず、喫緊の課題
- 築20年以上が経過した本館についても、設備の老朽化が課題
- 医療機能の拡充による職員数の増加や新たな医療機器の設置等により、施設の狭隘化も深刻な状況であり、今後の医療環境の変化を見据えた計画的な施設の拡張等の検討を行うことが必要
- 中部医療圏では、高齢化の進展による高齢患者の増加が見込まれる中で、国の政策による機能の集約化・重点化が求められるなど、県立中部病院は、地域の医療機関との機能分化・連携強化を図りつつ、これらに対応していく必要
- 令和5年度に外部有識者等を含めた検討委員会を設置して、県立中部病院が将来果たすべき役割・医療機能、南病棟の対応方針、施設全体の建替等について検討を重ね、県立中部病院将来構想を策定
施設面の課題は建物の面積
- <既存建物の機能的課題>
- 拡張性:延床面積35,609㎡、1床あたり面積63.7㎡で、近年整備された同規模同機能の公立病院より36.1㎡小さく、拡張余力がない。
- 感染対策:診療機能が分棟していること及び動線分離ができていないことが感染対策上の課題となっており、新興感染症に備えた体制整備が必要である。
- 災害対策:県内唯一の基幹災害拠点病院としての医療提供体制が十分ではない。
- 職員駐車場:病院敷地内に職員駐車場がない。
- <既存建物の設備更新時における構造上の問題>
- 本館:狭隘化に加え、築20年以上が経過し、設備の老朽化が課題であるが、一部設備の更新にあたっては、診療への影響が見込まれる。
病院概要
- 沖縄県立中部病院は、本県の基幹病院、地域の中核病院として、救急医療をはじめ小児医療、周産期医療等の政策的医療において重要な役割・機能を担っている
- 県立中部病院からへき地診療所に従事する医師を数多く派遣するなど、離島医療を支える上でも、重要な役割
沿革
- 戦後間もなく、旧具志川村宮里で設立された病院が前身となり、昭和21年には旧越来村へ移転、
- 昭和41年に旧具志川村の協力を得て、現在のうるま市字宮里に移転
- 昭和42年には、全国に先駆けて臨床研修制度を開始し、医師の育成に取り組んできたほか、米国の仕組みを取り入れ、24時間365日、軽症から重症まで全ての患者を受け入れる救急医療を提供
- 県立中部病院は、増加する地域人口や新たな医療需要に対応するため、放射線治療や人工透析等の機能を有する南病棟、診療機能の中心を担う本館、周産期医療等の機能を有する新病棟を増築し、医療提供体制の整備
移転による新病院の建設の声
「通常業務をしながら同時に建て替え工事を行うのは、職員への大きな負担になる。患者にとってもマイナス面が大きい」として、現地での建て替え案に反対の声もある。
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