移転・建替えする箕面市立病院の整備について、標記審議会で審議され、当審議会からの答申を受け、箕面市は今年(令和4年)秋頃に新病院の整備方針を決定する。
議論の前提
- 現市立病院は、築41年が経過し、老朽化が進行
- 施設構造上の制約により最新医療への対応も困難
- 平成29年度に市立病院の移転建替えが決定
- 移転先は船場東のCOM1号館跡地、新駅「箕面船場阪大前駅」から約300m(徒歩4分)の好立地であり、交通利便性の向上や、市内外からの患者増加等が期待
- 一方、現市立病院では赤字が継続しており、累積赤字は令和元年度で約120億円
- 平成30年度と令和元年度には2年連続で資金不足が発生し、計13億円の長期借入を行っており、その返済の目途も立っていない
3つの諮問事項
新市立病院の整備について調査審議する附属機関として、「箕面市新市立病院整備審議会」が設置され、審議会では次の3つの諮問事項について、市民・患者・医療関係者の視点で議論した。
- 諮問事項1「新病院が担うべき医療機能等」
- 諮問事項2「新病院の運営主体・運営手法」
- 諮問事項3「新病院の整備手法」
箕面市立病院が果たしてきた役割
- 箕面市立病院は、豊能二次医療圏に属する病院
- 病床数は、急性期病床267床、回復期リハビリテーション病床50床の計317床
- 市内唯一の「二次救急告示病院」として、24時間体制で救急患者に対応
- 市内唯一の急性期総合病院として、幅広い疾患に対する入院治療・手術等を行い、「がん診療拠点病院」にも位置付け
- 地域でいち早く開始した回復期リハビリテーションについては、急性期病床と併設しているメリットを生かし、最先端のリハビリテーションにも積極的に取り組み
- 新型コロナウイルス感染症への対応にあっては、国内症例の発生当初から体制整備に取りかかり、積極的に軽症・中等症患者の入院受入れや発熱外来の設置を行うとともに、ワクチン接種の推進にも尽力
諮問事項1「新病院が担うべき医療機能等」
新病院での基本的な診療科構成
●内科系
内科(総合)、消化器内科、糖尿病・内分泌代謝内科、循環器内科、血液内科、神経内科、
呼吸器・免疫内科(※新設に向け要検討)、腎臓内科(※新設に向け要検討)、精神科、小児科
●外科系
消化器外科、呼吸器外科、乳腺・甲状腺外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、
産婦人科(※分娩の取り止めも含め要検討)、眼科、耳鼻咽喉科
●その他、必要な支援系診療科、共同診療部門を設置
必要な急性期病床数は300~350床
- 新病院において医療機能のさらなる充実・強化を図る場合、一日当たりの入院患者数はおおむね300~315人程度になる見込み
- 整備すべき病床数は、一日当たりの入院患者数に対して、1割程度割り増して考える必要があることから、必要な急性期病床数は300~350床
- さらに、回復期リハビリテーションの実施には、急性期病床とは別に専用病床を確保する必要
- 今よりも医療機能を充実・強化し、病床規模を大きくすれば、より多くの患者に対応できるとともに、症例数が増えることで、医師等の確保も期待
病床確保のための方策
- 箕面市立病院が単独で新しい病院を整備する場合、制度上、病床を増やすことができない
- さらに、回復期リハビリテーション病床も移行することができず、急性期267床のみの整備となり、医療ニーズへの対応や診療体制の充実が難しくなることが予測
- 病床を確保するためには、国が推し進める病院の再編統合の制度を活用
- この場合、国からの特別な財政措置があるため、新病院の整備コストに係る市の財政負担も軽減
【市単独整備と再編統合の比較】
市単独整備 | 再編統合 | |
急性期の増床 | × 267床での整備となる | ○ 300~350床をめざすことができる |
回復期リハビリテーション病床の確保 | × | ○ 再編統合の相手次第で可能性あり |
新病院整備に対する国の特別な財政措置 | × 国負担25% | ○ 国負担40%(特別分として15%加算) |
医療機能の充実・強化のため、再編統合の制度を活用し、整備コストの軽減を図りながら急性期300~350床を確保すべき。 また、急性期病床を最低300床以上を確保した上で回復期リハビリテーション病床の確保にも最大限努めるべき。
- 豊能二次医療圏は、医療法上の規定に基づく病床過剰地域であり、基本的に増床は認めらない。
- 箕面市立病院の回復期リハビリテーション病床は、特定病床として現病院に対して認められたものであり、移転建替えの場合は新たに申請しなければならないが、箕面市立病院が行っている回復期リハビリテーションは特定病床の現在の要件に該当せず、申請できない。
諮問事項2「新病院の運営主体・運営手法」
再編統合の実現可能性あり
- 豊能二次医療圏内の病院にアンケート調査を実施したところ、箕面市立病院との再編統合に「取り組みたい」、「興味がある」と答えた病院が複数確認、実現可能性はあり
- 「取り組みたい」とする病院は、いずれも、「新病院を自ら運営する」ことを希望、再編統合を実現させる場合、指定管理者制度の活用が前提
市の財政負担が小さい指定管理者制度
- 運営手法の違いによる市の財政負担について試算した結果、市直営267床で運営するよりも、指定管理者制度で300~350床で運営した方が、市の負担が軽減され、コストパフォーマンスが高いことが確認
答申内容
- 再編統合に「取り組みたい」とした病院の意向を踏まえると、指定管理者制度の活用が前提
- この場合、協定書の締結や指定管理料の負担により、公立病院として担うべき医療等の提供を担保ることができると判断
- 市直営と比較し、市の財政負担が軽減されることから、新病院の運営手法は指定管理者制度を選択すべきであるとの結論に至ったが、次の点に留意
- ①指定管理者の選定にあたっては、新病院がめざす姿、担うべき医療機能等を実現できる法人等であることを最優先に選定すること。
- ②指定管理者による市立病院の運営について、市がより質の高いチェック機能を確保し、長期的かつ継続的にその責任を果たしていくため、高度で専門的な知見をもつ持つ第三者などで構成される機関の設置を検討すること。
諮問事項3「新病院の整備手法」
各手法の比較検討
- 築41年を超えて老朽化が進行している現状を鑑み、工期短縮を実現しやすい「ECI方式」や「基本設計からのDB方式」を中心に、コストメリット等も総合的に勘案し、適切な整備手法を選択されたい
- 従来採用されてきた「設計施工分離方式」のほか、設計段階から建設会社の技術協力を得る「ECI(Early Contractor Involvement)方式」や、設計と施工を一括発注する「DB(Design-Build)方式」などの整備手法について確認
- コンストラクションマネージャー(CMr)が技術的に中立な立場からコスト・品質・スケジュールのマネジメント業務を行う「CM方式」の活用についても確認
付帯意見
- 指定管理者制度への移行に伴い、現市立病院の職員の処遇に大きな変化が生じることが想定されるが、職員への今後の対応については、丁寧かつ誠意を持って行うこと。
- 指定管理者が管理運営しやすい施設となるよう、早期に指定管理者を決定し、指定管理者の意見を反映しながら設計等を行うとともに、時代の変化に対応できる柔軟性、可変性のある施設となるよう留意すること。
出所:箕面市HP
コメントを残す