鹿児島県錦江町は、老朽化が進む肝属郡医師会立病院(錦江町神川)の移転建て替えに向けて、2022年度当初予算案に基本・実施設計費9200万円を計上したことが公表されました。
肝属郡医師会立病院は鹿児島県の鹿児島湾(錦江湾)の東岸にある大隅半島に位置し、のどかな海沿いの病院です。
2025年の移転新築開院を目指して
現在の肝属郡医師会立病院は地域の医師会にて運営されていますが、開院後数十年が経過し老朽化や狭隘化が進んでいること、また現地では防災上の懸念もあることから、移転新築の計画が検討されていました。
2021年には移転最適地として南部消防署付近が適当と決まり、今後は設計業務が進み、5年度に本体着工、7年開院を目指というものです。
本件の特徴として、近隣の医師会では高齢化が進み、施設の再整備を医師会単独では実施ができないだろうという判断のもと、現病院の位置する行政機関(錦江町)に加え、隣接する南大隅町と共同で、新たな病院の整備計画を数年単位ですこしずつ進めている点にあります。
過疎化が進むとはいえ、広域の住民に医療を提供したいという医師会の意思を二町が足並みをそろえて計画を推進しています。
基本計画では、「地域住民に信頼され、安心して医療を受けられる病院を目指して」というコンセプトのもと、4つの目標を設定しています。
- ① 回復期を軸に急性期・慢性期を含むケアミックス病院
- ② 機能を絞り整備費を軽減したコンパクトな効率的な施設
- ③ 整備後の人口減少にも対応できるよう、柔軟な運用が可能な施設
- ④ 地域の介護施設と連携した医療・介護・福祉サービスの一元的な提供が可能な施設
病床数は現状の196床から64床を削減した132床とし、地域包括ケア病床50床、障害者施設等病床47 床、療養病床35 床としています。
過疎地で無理せず機能を絞り込み
地域連携のあるべき姿として、2040 年以降を見据えた病院づくりと病棟構成としており、医療と介護の連携を図った地域包括ケアシステム実現のため、自院の立ち位置と、各医療機関の役割分担を明確化しています。
そのため、高度急性期から慢性期までの全ての患者を診るのではなく、患者の病期(ステージ)を明確にして、患者のニーズに合った医療を提供できる施設を整備するものとしています。
介護施設への機能転換も視野に
新病院は、多様化する患者ニーズへの対応や療養環境の充実、医療スタッフが働きやすい環境の
整備などに対応するため1床当たり 70 ㎡を確保し、延床面積を9,200 ㎡程度としています。
また、人口減少が続く地域での病院再整備ということもあり、将来の介護施設への機能転換も考慮するものとしており、設計の工夫が期待されます。
施設規模に関するその他
- 外来患者や健診受診者等が、1フロア内で必要な診察や検査が受けられるように1階部分を広く取り、病棟は2階以上に配置する。
- 病棟は 132 床を確保するためには2フロアが必要となり、建物は地上3階建が基本になる。
- 地域の自然災害に必要な耐震性能を確保し、患者や医療スタッフの安全確保に加えて病院機能の維持を図る。
- ランニングコスト(運転費用・維持管理費用)の縮減・イニシャルコスト(設備費用)の軽減を目指したものにする。
階層計画
- 1階には外来部門、救急部門、内視鏡部門、放射線部門、生理検査・検体検査部門、栄養部門、地域連携部門を配置する。
- 2 階には病棟と手術部門、透析部門、リハビリテーション部門を配置する。
- 3 階には病棟を配置する。
病院再整備の総事業費は総額62億円
病院の整備費については、錦江町及び南大隅町で負担するものとされていますが、病院再整備の総事業費は62億円と試算され、ややボリューム感があります。
※整備費は、実質的な負担割合が3割となる過疎対策事業債(総務省HP)を使う。
項目 | 税込金額(百万円) | 備 考※括弧は内訳金額 |
1 造成費 | 99 | 造成費 |
2 設計・監理費 | 268 |
基本設計費(52)、 |
3 建設工事費 | 4,200 | 本体工事費(4,007)、 外構工事費(193) |
4 医療機器等整備費 | 1,025 | 医療機器(483)、 情報システム(350)、 その他の備品(152)、 什器・備品(40) |
5 予備費 | 278 | 予備費(事業費(1~4)の 5%) |
整 備 費 合 計 | 5,870 | |
6 その他 | 421 | 病院解体費、引越費用 |
事業スケジュール
令和4年度から基本設計が始まり、そのまま実施設計に入る計画となっています。整備手法により開院時期の前後はありますが、2025年の開院予定となっています。
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