病床機能報告は、地域医療構想の策定にあたり、地域の医療機関が担っている医療機能の現状把握、分析を行う必要があることから、平成26年度より開始された制度です。
医療機関は、毎年病床や設備、人員体制について都道府県に報告することになっている。全国的なデータであるため、近隣の他病院の状況について確認するデータとしても利用可能です。但し、毎年報告項目が変わっている点には注意が必要です。
また、一般的に公開されない病院の生データと比較すると、一部データに整合が取れない部分もあります。※例えば、病床機能報告に記載のある救急受け入れ件数と病院側が受け入れたとする自院のデータでは差があることがあります。
令和2年度の病床機能報告では、施設票と病棟票の2つが公開されています。自院の医療機能の検討資料とするほか、企業であればヘルスケア・マーケティングに利用することが出来そうです。
施設票の主なデータ内容
施設票には医療機関名、都道府県、二次医療圏、市町村のコード及び名称が振られており、それぞれで絞り込むことが可能です。また、DPC群の種類(DPC病院であるか否か)も選択可能です。
看取りを行った患者数
今後、看取りは増加していきますが、現時点でどの医療施設がどの程度の看取りを行っているかを確認することが出来ます。医療機関以外・医療機関、さらに自宅・自宅外・連携医療機関などの件数も報告されており、地域の看取りを担っている病院を調べることもできます。
医療機器の台数
近隣病院の医療機器保有状況を自身で調べようとすると、途方もなく労力がかかりますが、病床機能報告のデータを利用することで、すぐに把握することが出来ます。
CTはマルチスライスCTとして3区分(64列以上、16列以上64列未満、16列未満)、MRIも3区分(3テスラ以上、1.5テスラ以上3テスラ未満、1.5テスラ未満)で台数が記載されています。
そのほか、血管連続撮影装置、SPECT、PET、PETCT、PETMRI、ガンマナイフ サイバーナイフ、強度変調放射線治療器、遠隔操作式密封小線源治療装置、内視鏡手術用支援機器(ダヴィンチ)など主要な医療機器が記載されているので、自院の目指す医療機能が近隣と比較し、重複するかどうかの指標として活用することが出来ます。特に新たに施設整備をする際、全国的に同規模病院の保有する医療機器台数を抽出することで、自院でも保有すべき医療機器の機能・台数などの参考にもなります。
退院調整部門の設置状況
これからの病院機能の中でも重要視されている退院調整部門ですが、職員体制(医師、看護職員、MSW、事務員)が記載されています。例えば、近隣の病院で退院調整部門が優れているとされる病院の体制を抽出し、自院と比較することで、体制の目安とすることができます。
職員数は全体・手術・外来
職員数は主要な職種(医師、歯科医師、看護師、准看護師、看護補助者、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、管理栄養士)で常勤・非常勤で記載されています。
同様に、手術室の職員数、外来の職員数も職種別・常勤非常勤別に記載されており、自院の体制と比較することが可能です。
病棟票の主なデータ内容
病棟票は、当該施設の病棟構成がどのようになっているのかを報告しているものです。そのため、各病院の病棟別病床数や病棟機能、病棟職員数などが記載されています。また、建物の建築時期も記載されているため、次期建て替え等の営業リストにもなりそうです。
医療機能
各病棟は、高度急性期、急性期、回復期、慢性期、休棟中(再開予定)、休棟中(廃止予定)で報告されています。
また、一般病床・療養病床(医療療養・介護療養)ごとに許可病床数・稼働病床数、算定する入院基本料・特定入院料及び届出病床数が記載されています。
病棟部門の職員数
実務では看護配置及び夜勤体制などを考慮し病棟職員を配置していますが、その他の職種職員はどの程度配置されているのでしょうか。
病床機能報告では、看護師、准看護師、看護補助者、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、臨床工学技士、管理栄養士ごとに職員数が記載されています。
主とする診療科
病棟の主とする診療科が記載されているので、他病院がどの診療機能に力を置いているか(または力や発言力のある診療科)を把握することが出来ます。また、複数の診療科で利用されている病棟については、上位3つの診療科が表示されており、複合病棟の参考にすることができます。
新規入棟患者数
平均在院日数が短縮する中、新規の患者獲得は重要です。他病院の各病棟がどの程度の新入院患者を獲得しているのかを知ることが出来ます。さらに、入棟前の場所・退棟先の場所別の入院患者の状況も報告されてるので、新入院患者をしっかり獲得している病院がどこから患者を受け入れているのか、またその退院先について調べることで、自院の営業体制や入退院機能の強化に利用することもできます。
退院後に在宅医療を必要とする患者の状況
当該病棟から退院した患者数は、在宅医療を必要としない患者(死亡退院を含む)の他、自院や他施設が在宅医療を提供する予定の患者が記載されています。さらに、在宅医療の実施予定が不明の患者も記されていることから、地域全体で在宅医療にどの程度の患者数・受け入れが進んでいるのかを把握するデータとしても利用できます。
一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合
「急性期一般入院基本料」などの届出、「地域包括ケア病棟入院料」・「地域包括ケア入院医療管理料」・「特定一般病棟入院料」の届出を行っている場合 、「総合入院体制加算」の届出を行っている場合ごとに、以下の7区分で記載されています。
- ①A>=1点、
- ②A>=2点、
- ③A>=2点かつB>=3点、
- ④A>=3点、
- ⑤C>=1点 、
- ⑥「B14」または「B15」でA>=1点かつB>=3点、
- ⑦ ③または④または⑤または⑥に該当し、かつA>=1点かつB>=3点
リハビリテーションの状況
病棟票ということもあり、体制強化加算1又は2(回復期リハビリテーション病棟入院料)の届出の有無が記載されていますが、リハビリテーションを実施した患者の割合や平均リハ単位数(1患者1日当たり)が記載されいるので、自院のリハビリ提供体制が他病院と比較してどうなのか?ということが把握できます。
体制強化加算1の届出有りの施設では、実績指数も記載されているため、競合病院のリハビリ状況を把握するにも使えそうです。
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