22年7月設立 東京都立病院 独法化の流れ

東京都立病院の独立行政法人化の進捗状況
東京都立病院の独立行政法人化の進捗状況

これまでの経緯

  • 平成30年1月…都立病院の経営委員会の報告の中で、医療環境が急速に変化する中でも公立病院としての使命を果たし続けていくため、一般地方独立行政法人への移行について検討すべきとの提言
  • 提言も踏まえ、都として約2年をかけて検討を進め、都立病院と公社病院を一体的に地方独立行政法人へ移行することとした
  • 令和元年12月…考え方をまとめました「新たな病院運営改革ビジョン」の素案を公表
  • 令和3年9月28日…東京都の小池百合子知事は、都議会本会議で、都立・公社病院の独立行政法人への移行に伴い「東京都立病院機構」を2022年7月に設立すると表明。都立・公社病院を一体的に運営し、経営の効率化を目指す。高齢化による医療需要の増加に対応する。
  • 令和4年度内の移行を目途として準備中

出典:令和3年第3回 東京都議会定例会

都立病院の概要

現在、都立病院は8病院あり、その内訳は、総合病院5施設、神経難病の専門病院1施設、小児病院1施設、精神科病院1施設。

都立 8 病院の総病床数(医療法定床)は 5,066 床で、都内の総病床数の約4%であり、病床の種類別では、一般病床 3,854 床、精神病床 1,112 床、結核病床 60 床、感染症病床 40 床となっている。

都立病院 独法化の目的

超高齢社会の本格化など、医療環境が大きく変わる中でも、行政的医療の安定的・継続的な提供、地域医療の充実への貢献といった役割を、将来にわたって果たし続けていくこと。
このため、(1)行政的医療等の充実・強化、(2)地域医療の充実への一層の貢献を柱として、確実に実施できるよう検討している。

東京都立病院の地方独立行政法人化した際の運営イメージ
東京都立病院の地方独立行政法人による運営イメージ

(1) 行政的医療等の充実・強化

  • 都として求められる行政的医療を充実・強化することで、都民の安全・安心を支えていく。
  • 特に、災害・感染症等の緊急事態の発生時には、14病院が一体となって機動的に対応することで、都のセーフティネットの役割を果たす。
  • 地域に不足する医療や、高度・専門的な医療の一層の充実により、都民の医療ニーズに応えていく。

(2) 地域医療の充実への一層の貢献

  • 地域医療機関等と連携・協力しながら、地域医療の充実へ一層貢献
  • 地域包括ケアシステム構築を推進

都立病院 独立行政法人の基本的事項

現時点で検討されている都立病院独法化の基本事項は以下の通り。

  1. 法人化の範囲は、都立8病院と公社6病院、がん検診センターを1つの法人で運営する。
  2. 法人の種別は、設立時に原則として法人職員に身分が移行する、いわゆる一般地方独立行政法人とする。
  3. 法人名称・病院名称は、新たな都立病院として役割を果たし続けていくことを分かりやすく発信をするために、法人名は「東京都立病院機構」とし、病院名は、各病院の現行名称に「東京都立」をつけた名称する。
  4. 中期目標の期間は、5年とする。
  5. 法人本部は、設立時、都庁舎内に置く。

都立病院 独立行政法人の運営体制等

現時点で検討されている都立病院独法化の運営体制等は以下の通り。

(1)法人の運営体制

  1. 役員体制は、理事長、副理事長、理事、監事を置き、理事については病院長からも登用することを検討
  2. 法人の意思決定の仕組みは、組織の意思決定を迅速に行うため、理事会を設置。
  3. 法人本部の組織は、理事長等のトップマネジメントを支援する組織を検討。
  4. 外部の意見を聞く仕組みは、独法化後も地域の関係機関等からの意見を直接聞き、よりよい法人運営につなげていくため、法人内に有識者で構成する会議体を設置することなどを検討

(2)都の財源措置

運営費負担金は、これまでの一般会計からの繰入金と同趣旨であることから、公社病院も含めまして、必要な財源措置を受けることで、行政的医療を安定的に提供する。

各種制度の検討状況

(1)人事給与制度

職員が能力を最大限に発揮し組織が活性化する新たな制度について、以下の基本理念に基づき、職員の意見を聞きながら検討中。

  1. 地方独立行政法人の特性やスケールメリットを最大限発揮し、病院現場が抱える課題を迅速に解決する
  2. 職員の能力や職責、勤務実績を適切に処遇に反映し、職員が前向きに業務に取り組める
  3. 多様な人材が安心して働き続けるとともに、病院運営に必要な人材を確保・育成する

(2)財務会計・契約制度等

独法の会計基準に準拠した財務会計制度を検討するとともに、その下、契約制度については、交渉権入札など柔軟な契約手法の導入、また、共同購入の拡充など、スケールメリットを活かしたしくみを検討中。

また、法人の財産的基礎を確立するため、必要な土地建物等の財産について検討中。

医療機能強化の方向性について

高齢化の進展等に伴い質的・量的に変化する医療ニーズに的確に対応するため、働きやすく・働きがいのある人事給与制度など独法ならではの制度を構築することにより、必要な人材を機動的に確保し、行政的医療等の医療などを充実・強化する。

各病院の特色や専門性、地域ニーズ等を踏まえ、病院ごとに医療機能強化の方向性について検討中。

行政的医療等の一層の充実

医療環境の変化に対応するために必要な機能の充実・強化を図り、行政的医療を安定的・継続的に提供していくとし、取り組み例として救急医療や周産期医療、感染症医療の強化や島しょ医療の充実を挙げている。

  • 救急医療提供体制の強化…高齢化の進展に伴い増加が見込まれる合併症を有する救急患者などの救急医療提供体制を強化
  • 周産期医療の対応力の強化…年々増加する高年齢の出産や、低出生体重児等に確実に対応するため、母体搬送の受入体制を強化/ NICU等入院児の円滑な在宅移行に向け、支援体制を強化
  • 島しょ医療の更なる充実…島しょの患者が身近な地域で医療を受けられるよう島しょでの検査や診療応援の実施体制等を強化
  • 感染症医療の対応力強化…東京iCDCの対応方針の下、対応が難しい合併症患者等を率先して受入れ/流行状況に応じて、専門人材を地域の病院等へ派遣し、感染拡大防止に向けた技術支援を実施/平時からも、専門人材を地域の高齢者施設等へ派遣し、感染管理の知識や技術力の向上を支援
  • 「脳卒中センター」の設置…高齢化の進展に伴い増加が見込まれる脳血管疾患に対応するため、脳卒中の医療提供体制を強化
  • 「消化器センター」の設置…高齢者に多くみられる消化器疾患について、患者が身近な地域で治療を受けられるよう、消化器疾患の医療提供体制を強化

地域医療の充実への一層の貢献

地域医療の充実への一層の貢献として、地域医療機関等と連携・協力しながら、在宅療養の支援を図るとともに、「患者支援センター」の機能強化を図り、退院後の生活を見据えた支援を実施することで、地域包括ケアシステムの構築の一助となるよう地域の機関と連携をしながら取り組んでいくことなどを検討中。

  • 在宅療養患者の後方支援の充実…住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、在宅療養中の患者の急性増悪等の受入体制を強化
  • 治療と生活の両立を支援…患者や地域のニーズを踏まえ、土曜日や平日夜間に診療時間を拡大するなど、患者の仕事や社会生活と治療の両立に向け、診療体制を強化
  • 専門人材による地域への技術支援…医師や看護師等の専門人材を地域の医療機関や訪問看護ステーション等に派遣し、ケア等の技術力の向上を支援
  • 相談支援体制の充実…診断から治療、在宅療養に至るまでの様々な不安の解消を支援するため、患者やその家族等のニーズに応じた相談支援体制を充実
  • ICTを活用した医療連携の推進…ICTを活用した情報共有ツールにより、地域の医療機関・介護サービス事業者等と患者情報を共有し、地域包括ケアシステムの構築を推進

出所:令和2年度第1回都立病院経営委員会(令和3年3月24日開催)より抜粋、一部加筆

1件のコメント

病院が純粋な公立病院である限り優秀な医師は去っていくのは目に見えています。非合理的な職員採用、たとえば手術が多いにもかかわらず数少ない医師数しか雇えない、看護師も雇えない、クラークを多数の会社の入札でないと公平性が保てないからと毎年の入札で違った会社が通れば慣れた頃にまた教育しないといけない。医師は公務員試験を受けて勤務しているわけではないのに副業の禁止を筆頭に細かな規制が色々とあります。病院の貢献度が給与に反映せず、年功序列です。特に院長の命名などは病院職員が独自には決められず自治体の議員の縁故や大学教授との関連、金銭関係で決められることが多いので、いわゆる外部からの無能な院長の就任に白けムードが漂います。金銭的なバックアップは自治体にして、公務員法の枠外で自由でかつ合理的な経営ができるようにしないと、窮屈でまともな医師は残らないでしょう。それこそみんな開業してしまうことになるでしょうね。

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