DXからみた病院経営の将来像、つまりシステム化

GEヘルスケアと清水建設、淡海医療センターで医療現場の生産性向上に向けた協業を開始
GEヘルスケアと清水建設、淡海医療センターで医療現場の生産性向上に向けた協業を開始

GEヘルスケア・ジャパンと清水建設は、病院運営と施設運営の両面からDXを追求したスマートホスピタルの構築に向けて、協業することに合意したことが報道されました。

出典:「地域全体のスマート・ホスピタル構想を実現へ~GEヘルスケアと清水建設、淡海医療センターで医療現場の生産性向上に向けた協業を開始~2022年5月24日」

GEといえばフィリップスも総合経営支援に進出済み

2022年はGEヘルスケア・ジャパンによる経営支援ソリューションの提案となりますが、2019年にはフィリップスも同様の提案をしています。

トータル・ホスピタル・マネジメント・ソリューション「Tasy」 日本市場へ導入

いずれにしても、現状の電子カルテや部門運営システムを超え、病院の「全体最適」を目指す統合システムという点で、引き続き両社は機器含め競合であるとともに、毎度医療業界での後追いとなりますが、国内企業による同等システムの導入が待ち望まれるものです。

近年のDX化推進状況を鑑みるに、中小企業に導入されているような標準的な「経営支援統合システム」の導入は一層推進されるべきものであります。現状では中央システムである電子カルテを握られてしまうと当該病院の全情報システム(重要な診療情報も含め)に病院が手を出せないことが多いのですが、選択肢として支援システムがこれらを代替することで、経営支援の競争環境が整うのかもしれません。

※つまり、中小システム企業にとっても、経営統合システムを構築することによって、国内大手電カルベンダーに変わりうる可能性がある、ということであるとともに、大手ベンダーにとっては、現状のように病院の首根っこを押さえたブラックボックス的で横柄なシステム費を見直すべき時代に来ているのです。

未来の病院はコマンドセンター(指令室)が標準か?

本件の内容としては、GEヘルスケアと誠光会 淡海医療センターが協働で国内版の導入を行った「コマンドセンター」と、清水建設の建物OS「DX‐Core」のデータ連携を図り、「医療サービスの質向上」「医療従事者の業務効率化」「患者の利便性向上」に向けたサービスの提供に取り組むとしています。

つまり、DXを活用した遠隔での経営支援モデルです。

コマンドセンターでは、医療情報システムから収集する電子カルテなどのデータをリアルタイムに分析。病床の稼働状況やスタッフの業務を画面上で見える化し、病床の割り当てやスタッフ配置などの迅速な意思決定を支援しているとのこと。

まずは中央管理システムの構築からスタート

フェーズⅠは事前準備であり、淡海医療センターの既設設備機器を集中監視するプラットフォームをDX‐Coreにより構築。コマンドセンターとのデータ連携を図るとともに、病院運営の効率化に向けた課題を抽出。

GEと清水建設のシステム情報をコマンドセンターが判断

フェーズⅡでは、両システムのデータ連携実証を行う。たとえば、DX‐Coreが監視カメラ画像から院内の混雑具合を判断し、コマンドセンターがスタッフの配置変更を提案、あるいはコマンドセンターが新規入院患者の受入病棟を割り当てたら、DX-Coreが制御する案内ロボットが患者を当該病棟まで案内。

新たな医療経営プラットフォームへの展開

フェーズⅢとして、フェーズⅡでの実証成果を踏まえ、湖南メディカル・コンソーシアム(滋賀県草津市)に加盟する31法人99施設を対象に、コマンドセンターとDX-Coreを連携させたシステムの展開を目指す。

社会医療法人誠光会理事長 北野博也

「現在、誠光会では医療の質向上や医療従事者の働き方改革を目的とした様々な取り組みに着手しています。これらの取り組みにデジタル化は必要不可欠となっていますが、私たちは、単に業務の効率化を図るだけでなく、患者さんに対する新しい価値を創造するためにデジタル化を推し進めていきたいと考えています。すなわち、これまで蓄積されてきた膨大な医療関連データの活用や医療従事者と患者さんとの双方向コミュニケーションの強化など、所謂スマート・ホスピタルを目指した取り組みを加速させていきます。今回、清水建設様とGEヘルスケア様という強力なサポーターを得たことで私たちの将来構想の実現可能性が大きく高まったと考えています。」

清水建設株式会社㈱代表取締役社長 井上和幸

「リアルなものづくりの知恵と先端デジタル技術により、ものづくりをデジタルで行い、リアルな空間とデジタルな空間・サービスを提供する建設会社を「デジタルゼネコン」と定義し、当社が目指すゼネコン像としています。DX‐Coreはデジタルな空間・サービスを提供する技術の代表格で、すでにオフィスビルを中心に採用が進んでおり、お客様に喜ばれています。誠光会様、GEヘルスケア様との協業により培った知見を展開させていただくことで医療施設へのDX‐Coreの採用が進み、医療サービスの質向上や業務効率化に寄与することを祈念しております。」

GEヘルスケアと清水建設の協業に関する補足

GEヘルスケアがこれまで医療機関に提供してきたデータ分析・運営改善支援サービス「Brilliant Hospital」、関連するコンサルティング実務を提供することで院内の改善サポートを手掛け、清水建設は、「DX-Core」を通じて医療施設内の設備の情報を集約するためのプラットフォームを提供。両システムをデータ連携させることで、医療施設全体のデジタル化による予見性の高い分析能力の強化、運営全体の効率化・最適化を図り、最終的には医療の生産性向上およびアウトカムに寄与するスマート・ホスピタルの構築を目指す。将来的には新築・改築案件を対象に、“トータルプロデュースサービス”として、設計から施工〜医療システム〜機器最適配置、運用モデルまでデジタルサービスを基軸とした共同提案を目指す。  

清水建設の医療機関向けサービス

病院の設計・施工にとどまらず、経営戦略の策定から運営サポート業務にいたるまで病院経営を支援。また、総合建設業で唯一のシステムインテグレータとして20年にわたり、延べ200棟以上の施設の情報インフラを構築。これらの経験を基に、2020年10月より建物オペレーティングシステム「DX‐Core」の提供を開始し、医療施設においても運営システムと建物制御が容易に連携できるサービスの開発を進めてきた。

淡海医療センター

名     称 :社会医療法人誠光会 淡海医療センター
所 在 地 :滋賀県草津市矢橋町1660 TEL.077-563-8866(代表)
病 院 長 :古家大祐
施設規模:建築面積10,214.59m²、延床面積49,619.41m²
   許可病床数420床(ICU8床・HCU8床・急性期346床・回復期58床)

GEヘルスケア・ジャパン

GEヘルスケア・ジャパン株式会社は、GEヘルスケアの中核拠点の1つとして1982年に創設されました。予防から診断、治療、経過観察・予後管理までをカバーする「プレシジョン・ヘルス」の実現を目指し、インテリジェント機器やデータ分析、ソフトウェア、サービス等を提供しています。国内に研究・開発、製造から販売、サービス部門までを持ち、日本のお客様のニーズにお応えしつつ、日本が直面する医療課題の解決に取り組んでいます。日本における社員数は約1,700名、本社および60カ所の事業拠点があります(2022年4月1日現在)。
ホームページアドレスはwww.gehealthcare.co.jp