PFIとは
PFIとは、これまで公共部門によって行われてきた「公共施設等の建設から管理・運営(県民への公共サービスの提供を含む。)」までを一体的に民間事業者が行い、公共はその対価を支払うことにより、低廉かつ良質な公共サービスの調達を可能とする手法です。
(PFI:PrivateFinanceInitiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)
病院とPFI
3月29日に公表された総務省の「新公立病院経営強化ガイドライン」では、「病院施設・設備の整備に際しては、整備費のみならず供用開始後の維持管理費の抑制を図ることも重要であり、こうした観点から民間事業者のノウハウの活用を図る手法である PPP/PFIを活用することも考えられる。」と記されており、改めてPFIについて目を向ける必要があるようです。
一般的なPFIにおける病院事業では、民間事業者の集合体である特別目的会社(SPC)が、施設整備業務、維持管理業務、医療周辺業務、調達業務を包括契約して実施します。
PFIの始まり
PFIは、1992年に英国において新しい公共調達の手法として誕生し、その行財政改革に重要な役割を果たしてきました。
日本では、平成11(1999)年の「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(平成11年法律第117号、以下、「PFI法」という。)の施行を契機に、その導入が開始されました。
PFIの目的・効果
国民に対する良好かつ低廉なサービスの提供
民間の資金、経営能力、技術力(ノウハウ)を活用し、官民の適切なリスク分担によって事業全体の効率的なリスク管理を達成するとともに、建設、維持管理、運営を一体的に扱うこと等による事業期間全体を通じた事業コストの削減をはかり、安価で質の高いサービスの提供をはかる。
公共サービスの提供における行政の関わり方の改革
民間事業者にゆだねることが適切なものについて、民間事業者の自主性、創意工夫を尊重しつつ、事業をできる限り民間にゆだねて実施することによって、財政資金の効率的利用と官民の適切なパートナーシップの形成をはかる。
民間の事業機会の創出等による経済構造改革の推進
従来公共が担ってきた事業を民間にゆだねることにより民間の新たな事業機会を創出するとともに、プロジェクトファイナンス等新たな資金調達手法を取り入れることによる市場環境の整備等を通じて、経済構造改革を推進する。
PFIの主な特徴
一括発注(包括発注)、長期契約と性能発注
PFIの特徴として一括発注(包括発注)・長期契約・性能発注が挙げられます。これにより、PFI事業を実施するために選定された事業者(以下、「選定事業者」という。)が、公共部門から要求された水準の実現のために、複数の業務の相互の関連性や長期の事業期間を視野に入れた創意工夫を図ることが可能となります。
さらに、経営能力の活用等による改善努力を行い、効率性を追求することによって、その対価として、高い収益性が得られるというインセンティブが付与されるのです。
従来の公共事業設計の特徴
- 建設、維持管理、運営の各業務がそれぞれ分離・分割して発注されること
- これらの業務が複数年度にわたる場合でも、発注は毎年度行われること
- 発注者である公共部門が策定する詳細な仕様に基づき発注される
これに対し、
従来の公共事業とPFI方式の違い
- これらの業務が、包括的に、複数年度にわたる長期契約の形態で発注される
- 提供されるべき公共サービスの水準を必要な限度で示すことを基本とし、構造物、建築物の具体的な仕様の特定については必要最小限にとどめるという、いわゆる性能発注の考え方が採られている
VFM(ValueforMoney)による評価
VFMとは、「支払い(Money)に対して、最も価値の高いサービス(Value)を供給する」という考え方のことです。
PFI事業で行う場合と従来方式で行う場合とを比較し、前者の方が、支払いに対して価値の高いサービスを供給すること等になれば、PFI事業で行う場合に「VFM」があることになります。
公共サービス水準を同一に設定した場合のVFMは、公共が自ら実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値(PSC:PublicSectorComparator)とPFI事業として実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値(「PFI事業のLCC」(LCC:LifeCycleCost))を用い、その差額により、または、以下の計算式に基づいて示されることがあります。
【計算図】
官民間での適切な責任及びリスクの分担
PFIでは、「リスクを最もよく管理することのできる者が当該リスクを分担する」との考え方に基づき、事業実施主体(公共施設等の管理者等)と選定事業者は、事業契約においてリスクが顕在化した場合の追加的支出の分担を含む措置について、できる限りあいまいさを避け、具体的かつ明確に規定することが必要であるとされています。
PFIの対象施設
PFI法第2条では、PFIの対象となる事業を以下のように規定しています。
- 公共性原則…公共性のある事業が対象
- 民間経営資源活用原則…民間の資金・経営能力および技術的能力の活用
- 効率性原則…民間の自主性と創意工夫を尊重することによる効率的・効果的実施
- 公平性原則…特定事業および民間事業者2の選定における公平性の担保
- 透明性原則…事業の全過程を通じての透明性の確保
- 客観主義…各段階の評価決定についての客観性
- 契約主義…明文による当事業の役割および責任分担等契約内容の明確化
- 独立主義…企業体の法人格上の独立性または事業部門の区分
PFI事業の対象施設としては、従来、公共部門が自ら整備・運営してきた公共施設等が概ね対象となっています。以下の各施設(設備を含む)の建設、改修、維持管理もしくは運営、またはこれらに関する企画をいい、国民に対するサービスの提供を含みます。
- 道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、水道、下水道、工業用水道等の公共施設
- 庁舎、宿舎等の公用施設
- 公営住宅及び教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更生保護施設、駐車場、地下街等の公益的施設
- 情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設(廃棄物処理施設を除く)、観光施設及び研究施設等
PFIの事業スキーム
特別目的会社(SPC)が契約主体
PFIの事業スキームの大きな特徴は、実際に事業を行う建設会社等が事業実施主体(公共施設等の管理者等)の契約の相手方になるのではなく、これらの企業が出資して設立するSPC(※)が契約の相手方となることです。
(※SPC = Special Purpose Company その事業の為だけに、複数の企業が事業体を組んで設立する特別目的会社)
これは、基本方針に示された「独立主義」という考え方によるものであり、これによりPFI事業に対する出資企業の経営状況等の影響を減殺することが可能となり、プロジェクトファイナンスを行うことが容易になるほか、PFI事業以外のリスクを回避したい公共側のニーズにも資することとなります。
PFIの所有形態別の類型
PFIは、施設・資産の所有形態等により事業方式が類型化されています。
BTO 方式 Build-Transfer-Operate
建設・移管・運営” 選定事業者が対象施設を設計・建設し、完工直後に公共部門に施設所有権を移転後、公共部門の所有となった施設の維持管理及び運営を行う事業方式
BOT 方式 Build-Operate-Transfer
建設・運営・移管” 選定事業者が対象施設を設計・建設し、完工後も対象施設を所有し続けたまま維持管理及び運営を行い、事業期間終了時に公共部門に施設所有権を移転する事業方式
BOO 方式 “Build-Own-Operate
建設・保有・運営” 選定事業者が対象施設を設計・建設し、これを所有したまま維持管理及び運営を行う点では BOT 方式と同じだが、事業期間終了時に、選定事業者が対象施設を解体・撤去する点が異なる。
RO 方式 “Rehabilitate-Operate
改修・運営” 選定事業者が対象施設を改修した後、その施設の維持管理及び運営を事業期間終了時まで行う事業方式である。
O 方式 “Operate
運営” 選定事業者は、施設の設計・建設や保有は行わず、施設の維持管理及び運営のみを事業期間終了時まで行う事業方式である。
BLO方式 “Build-Lease-Operate
建設・リース・運営
” 選定事業者が建設(Build)した施設を、公共側が買い取り、選定事業者にその施設をリース(Lease)し、選定事業者がその施設の運営(Operate)を行う方式
BLT方式 “Build-Lease-Transfer
建設・リース・移管” 選定事業者が建設(Build)した施設を、公共側に一定期間リース(Lease)し、予め定められたリース料で事業コストを回収した後、行政に施設の所有権を移管(Transfer)する方式
DBO “Design-Build-Operate
設計・建設・運営” 選定事業者に設計(Design)、建設(Build)、運営(Operate)を一括して委ね、施設の所有、資金の調達については公共側が行う方式
略称 | 事業方式 | 内容 |
---|---|---|
BTO 方式 | Build-Transfer-Operate 建設・移管・運営 | 選定事業者が対象施設を設計・建設し、完工直後に公共部門に施設所有権を移転後、公共部門の所有となった施設の維持管理及び運営を行う事業方式 |
BOT 方式 | Build-Operate-Transfer 建設・運営・移管 | 選定事業者が対象施設を設計・建設し、完工後も対象施設を所有し続けたまま維持管理及び運営を行い、事業期間終了時に公共部門に施設所有権を移転する事業方式 |
BOO 方式 | Build-Own-Operate 建設・保有・運営 | 選定事業者が対象施設を設計・建設し、これを所有したまま維持管理及び運営を行う点では BOT 方式と同じだが、事業期間終了時に、選定事業者が対象施設を解体・撤去する点が異なる。 |
RO 方式 | Rehabilitate-Operate 改修・運営 | 選定事業者が対象施設を改修した後、その施設の維持管理及び運営を事業期間終了時まで行う事業方式である。 |
O 方式 | Operate 運営 | 選定事業者は、施設の設計・建設や保有は行わず、施設の維持管理及び運営のみを事業期間終了時まで行う事業方式である。 |
BLO方式 | Build-Lease-Operate 建設・リース・運営 | 選定事業者が建設(Build)した施設を、公共側が買い取り、選定事業者にその施設をリース(Lease)し、選定事業者がその施設の運営(Operate)を行う方式 |
BLT方式 | Build-Lease-Transfer 建設・リース・移管 | 選定事業者が建設(Build)した施設を、公共側に一定期間リース(Lease)し、予め定められたリース料で事業コストを回収した後、行政に施設の所有権を移管(Transfer)する方式 |
DBO | Design-Build-Operate 設計・建設・運営 | 選定事業者に設計(Design)、建設(Build)、運営(Operate)を一括して委ね、施設の所有、資金の調達については公共側が行う方式 |
PFIの事業類型
PFIの事業類型には、サービス購入型、いわゆる独立採算型、混合型(サービス購入型と独立採算型をあわせた形態)がある。これらの事業類型は、官民の係わり方や選定事業者の収入の源泉等の違いに基づいて分類されます。
サービス購入型
選定事業者は、対象施設の設計・建設・維持管理・運営を行い、公共部門は選定事業者が受益者に提供する公共サービスに応じた対価(サービス購入料)を支払う。選定事業者のコストが公共部門から支払われるサービス購入料により全額回収される類型。
いわゆる独立採算型
選定事業者が自ら調達した資金により施設の設計・建設・維持管理・運営を行い、そのコストが利用料金収入等の受益者からの支払いにより回収される類型。この場合、公共部門からのサービス購入料の支払いは生じない。ただし、公共部門により施設整備費の一部負担や事業用地の無償貸付が行われる場合もあります。
混合型
選定事業者のコストが、公共部門から支払われるサービス購入料と、利用料金収入等の受益者からの支払いの双方により回収される類型。いわば「サービス購入型」と「いわゆる独立採算型」の複合型である。VFMに関するガイドラインに示されている「いわゆるジョイント・ベンチャー型」と同義。
PFIにおける事業者選定方式
総合評価一般競争入札方式
総合評価一般競争入札は、予定価格の範囲内で申し込みをした者のうち、価格だけではなくその他の条件(維持管理・運営のサービス水準、技術力等)を総合的に勘案し、落札者を決定する方式です。落札者を決定するための評価値の算定方法としては、価格以外の要素による得点と価格要素による得点を加算する「加算方式」と、価格以外の要素による得点を価格で除算する「除算方式」が挙げられます。
公募型プロポーザル方式(随意契約)
地方公共団体においては、公募により提案(プロポーザル)をつのり、 優先交渉権者を選定し、当該者と随意契約により契約を締結するいわゆる公募型プロポーザ ル方式が、広く採用されています。
PFIとPPP
広範に用いられるPPP/PFIという言葉のうち、PPPは官民連携の総称であるという共通認識に基づいて使用されているが、PFIは法律に定義が規定されています。
PPP(Public-PrivatePartnership)とは日本でいうPFIの手法を含めた官民連携のスキームを、国際的にはPPP(Public-PrivatePartnership)と呼称することが一般です。
このPPPについては、国際的に一致した定義はないようです。たとえば、EU委員会が平成16(2004)年4月に加盟各国からの意見を把握するために公開したグリーンペーパー2では、PPPについて、以下のように示しています。
「PPPという用語はEUレベルでは定義されていない。一般的には、この用語はサービスを提供するインフラの資金供給、建設、更新、運営、維持管理を行う民間と公共の協力の形態をいう。」
病院PFI事例
高知医療センター(高知市、648床)
県立中央病院と高知市立市民病院を統合した、病院における日本初の本格的PFI事業。2005年の開院直後から、VFM(※同水準のサービスをより低いコストで提供すること)が発揮されず、契約解除。2010年以降は企業団の直営で病院は運営されています。
八尾市立病院(大阪府、380床)
八尾市立病院では全国に先駆け、2004年から15年契約で病院PFIを導入し、2019年度からはさらに15年間の第2期PFI事業をスタートさせています。
都立駒込病院におけるPFI事業
RO方式(Rehabilitate-Operate)により実施しました。具体的には、病院経営及び診療業務(医師、看護師等の業務)については東京都が直営で実施しますが、PFI事業者が病院施設を改修することで病院機能を向上させるとともに、平成21年4月から17年間にわたる維持管理・運営業務を行い、最先端の機能を有する「がん・感染症医療センター」として整備・運営します。病院運営を継続しながら改修工事を行うという日本初の病院PFI事業です。
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