広島県 1000床の巨大新病院

広島県 高度医療・人材育成拠点の整備
広島県 高度医療・人材育成拠点の整備

計画策定の背景

広島県では、医師や診療科の偏在、高度医療機器の分散、都市部における医療機能の重複などに課題があり、とりわけ、高度な医療資源(医療スタッフ・高額医療機器・医療施設)が集中する広島都市圏において、医療資源を集約化することにより、県内全域を対象に高い水準の医療を提供するとともに、中山間地域の地域医療を維持する必要がある。

有識者会議から提言された「高度医療・人材育成拠点ビジョン」を踏まえ、広島県では関係機関と協議し、昨年11月、拠点に必要な医療機能や広島都市圏の医療機能の分化・連携・再編の方向性等を「基本構想」として取りまとめた。

この基本構想に基づき、県立広島病院、JR広島病院、中電病院の3病院を中心に多くの医療資源を集約し、高度な医療や様々な症例が集積された魅力的な環境を整備することにより、全国から意欲ある若手医師を惹き寄せ、患者の状態に応じた切れ目のない医療を地域の医療機関と連携して提供する地域完結型医療を実現するとともに、広島県内で従事する医療人材の地域への派遣・循環体制の構築を目的とした新病院の基本計画を策定した。

医療再編のイメージ図
医療再編のイメージ図
病院名運営主体再編・集約の方向性
県立広島病院公立 4つの医療機関が一体となって、主に高度急性期医療を担う新病院を構築
JR広島病院民間
中電病院民間
広島がん高精度放射線治療センター (HIPRAC)公立
舟入市民病院公立小児救急を含めた小児診療機能を新病院へ集約 ・急性期病床の一部を回復期病床へ転換することを検討
土谷総合病院民間小児循環器診療機能を新病院へ集約 ・急性期病床の一部削減を検討
その他の医療機関新病院への一部医療機能の集約について引き続き検討

病床数は1000床

新病院の病床数については、将来の医療需要に加え、新病院が提供する医療レベルの向上や、集積した医療人材の育成機能の向上、さらには、高齢化に伴う救急医療需要の増加などを加味した上で、県内の高度医療の提供状況を踏まえ、必要十分な病床数として1,000床とする。

一般病床
内、重症系病床(130床):
E-ICU(救命救急集中治療室):12床、SCU(脳卒中ケアユニット):9床、E-HCU・CCU(救命救急高度治療及び心臓血管集中治療室):20床、S-ICU(外科系集中治療室):10床、PICU(小児集中治療室):6床、HCU(高度治療室):28床、MFICU(母体・胎児集中治療室):6床、NICU(新生児集中治療室):15床、GCU(新生児治療回復室):24床
950床
精神病床(児童・思春期病床を含む)50床
総病床数1,000床
高度医療・人材育成拠点 新病院の病床構成

診療科

新病院の診療科目については、広島大学をはじめとした地域の医療機関との役割分担及び連携体制を踏まえ、現在、再編対象病院が有する診療科を維持しつつ、新病院が備えるべき専門性に合わせた次に掲げる41の科目を基本として検討する。

1日あたりの外来患者数は約 1,800 人想定。

総合診療科、感染症科、循環器内科、消化器内科、内視鏡内科、呼吸器内科、腎臓内科、リウマチ科、糖尿病・内分泌内科、脳神経内科、臨床腫瘍科、精神神経科、消化器外科、乳腺外科、移植外科、心臓血管外科、呼吸器外科、整形外科、形成外科、脳神経外科・脳血管内治療科、皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科・頭頚部外科、リハビリテーション科、放射線診断科、放射線治療科、歯科・口腔外科、麻酔科、救急科、小児科、小児腎臓科、小児循環器科、新生児科、小児外科、小児感覚器科、産婦人科、生殖医療科、緩和ケア科、病理診断科、ゲノム診療科

新病院の主な機能

機能機能概要
  救急医療各高度専門医療センターとの連携及び救急車の多重受入可能な施設整備による“断らない救急”の実践 •検査、治療を複数の部屋の移動なく行えるハイブリッドERの整備
交通事故による多発外傷、顔面外傷など専門的治療を行う“外傷センター”
  小児医療中国地方初、ERを併設した24時間365日対応する“小児救命救急センター” 小児集中治療室(PICU 6床)の整備による救急・術後患者への重点的な対応 等
  周産期医療24時間体制での周産期医療を提供する“総合周産期母子医療センター”
高機能病床(母体・胎児集中治療室:MFICU 6床、新生児集中治療室:NICU 15床、新生児治療回復室: GCU 24床)の整備による重症例への対応 等
  感染症医療感染症拡大時に一般病床から速やかに感染症対応病床に転換できる施設の整備 専用の入口や専用エレベーターなど、感染症拡大時に一般患者と分離できる動線の確保      等
  災害医療南海トラフ地震を想定した免震構造、災害時にも診療継続を可能とする豪雨災害等を想定したフロア構成 災害発生時の継続的な医療活動を支える対応スペースとしての空地確保     等
  へき地医療遠隔診療や検査によって、どこに住んでいても高度な医療・検査を受けられる体制の整備 •オンライン会議システムの活用等による中山間地域で勤務する医師への支援体制の整備
  がん医療手術、化学療法、放射線治療、ゲノム医療などを組み合わせた最新の集学的治療を提供する“がん医療セ ンター”
AIなどを用いたデータ利活用等による、新たながん治療法を開発するための高度な臨床研究や治験の実施
  循環器医療心疾患や大血管疾患症例に対する低侵襲治療の実施や、高難度手術にも対応する“心臓血管センター” •脳卒中ケアユニット(SCU)を備え、高機能手術室等における低侵襲治療の実施や、高難度手術にも対応   する“脳卒中センター”
急性期 リハビリテーション医療各種センターや多職種が連携した治療早期からのリハビリテーション治療の実施 質の高いリハビリテーション治療による合併症の予防、日常生活動作(ADL)と生活の質(QOL)の向上    等
  消化器医療最先端内視鏡(カプセル内視鏡・ファイバースコープ)の整備による先端的な消化器内視鏡治療の提供
がん医療センター、消化器内視鏡センターとの連携による、低侵襲な腹腔鏡手術や肝胆膵領域の専門的な 検査・治療の実施 等
  呼吸器医療標準治療が確立した症例から難治性呼吸器疾患まで幅広い症例に対応する“呼吸器センター” 呼吸器分野におけるカテーテルを活用した高度・先進医療の実施     等
  腎臓医療各種血液浄化療法や、小児・成人の腎移植に対応する“腎臓センター”
小児救命救急センターと連携した小児腎不全医療の充実   等
  糖尿病医療合併症を有する糖尿病患者、重症糖尿病患者への対応
「ひろしまDMステーション」と協調した遠隔医療体制による質の高い糖尿病医療の実施  等
  緩和医療緩和ケアチームが包括的かつ横断的に診療科を支援する“緩和ケアセンター”による、がん患者及び非が ん患者(呼吸器不全や心不全等の臓器不全など)の緩和医療ニーズへの対応 等
  精神医療自傷や身体合併症を有する精神科救急患者、重傷例や複雑な背景を持つ児童・思春期症例への対応 小児科との併診例や、摂食障害など、一般の精神科病院では入院対応が困難な患者への対応    等
先進医療広島大学病院と連携した臨床試験、臨床治験等の推進による、新しい医療・医療機器の開発への貢献    等
  ゲノム医療がん、生活習慣病、小児、周産期、生殖医療など幅広い診療領域における遺伝性疾患の診断治療の実施
ゲノム解析による一人ひとりの体質や病状に合った医療の実施 等
  歯科・口腔外科医療顔面外傷や口腔がんをはじめとした高難度口腔外科疾患への対応 周術期を中心とした入院患者に対する口腔ケアの実施    等

建設予定地は広島駅の北側の新幹線口周辺地区

JR広島駅からの全景イメージ
JR広島駅からの全景イメージ
  • 位置:広島県広島市東区二葉の里3丁目1番1(JR広島駅新幹線口から約300m)
  • 敷地面積:26,137.75㎡
  • 周辺道路:[南側]14.0m(市道)、[東側]9.6m(市道)、[北側]11.2m(市道)、[西側]14.0m(市道)

新病院棟の施設規模は1,000床に対して延べ面積約96千㎡。新病院棟の他に、立体駐車場、院内保育所、駐車場渡り廊下及び広島がん高精度放射線治療センター(HIPRAC)上空通路等を含めた延べ面積115千㎡。上記とは別に、延べ面積で4千㎡の拡張可能な増築スペースを確保する。

今回の新病院棟整備に当たって、①全体工程への影響、②工事工期の短縮効果、③コスト縮減効果、④ 発注者(病院スタッフを含む)の意向の反映、⑤発注者の業務負担の5つの重要な視点からメリット・デメ リットを整理した結果、新病院整備ではECI方式を想定し検討を進める。
※ECI方式:施工予定業者が実施設計の段階から参画し、コスト縮減及び工期短縮が期待できる発注方式

断面図

新病院棟は、高層部に病棟機能、低層部に診療機能を配置し、運用の効率化と診療機能の集約化を図る。

高層部( 5 階~ 16 階) は病棟、低層部( 地階~7 階) 診療・外来・供給・管理部門。

主な大型医療機器の整備内容

主な大型医療機器の整備は放射線治療装置3台、RALS1台、ハイブリッド手術用アンギオ装置2台に加え、情報システム等も含めて、総額約 170億円程度を想定している。

部門名機器種別想定整備数
放射線部門 (診断)一般撮影装置7台
X線透視装置(内視鏡センター専用を含む)8台
骨密度測定装置1台
マンモグラフィ1台
アンギオ装置(心臓用・頭腹部・多目的用を含む)6台
CT装置6台
MRI装置5台
SPECT-CT装置2台
PET-CT装置2台
放射線部門 (治療)放射線治療装置(リニアック装置)3台
遠隔操作密封小線源治療装置(RALS)1台
検査部門自動分析装置等一式
検体搬送ライン・分注システム一式
薬剤部門自動注射薬払出装置一式
手術部門術中画像診断・治療装置 (ハイブリッド手術用アンギオ装置)  2台
手術支援ロボット3台
手術室関連機器 (シーリングペンダント・手術映像管理システム)  一式
救急部門画像診断・治療装置(ハイブリッドER用アンギオ装置)1台
集中治療部門集中治療・管理関連機器 (生体情報モニタシステム・IABP・PCPS・人工呼吸器等)  一式
主な大型医療機器の整備内容

概算事業費は1,400億円

現時点の概算事業費は1,400億円と試算されるが、建築資材・人件費などの原価高騰、物価上昇等により事業費の変動が発生する可能性がある。

項目事業費備考
土地購入費用約 180億円 
JR広島病院資産譲渡約 50~60億円 
基本設計・実施設計約 20億円 
建築工事等約 850~950億円新病院等整備費 既存棟駐車場改修費 等
医療機器・システム約 170億円既存医療機器を活用しつつ高度医療提供に 必要な機器・システムを導入
県立広島病院建物解体費約 30億円 
合計約 1,300~1,400億円
新病院の事業費は1,400億円

新病院は2030年に開院予定

新病院開院は2030年度を見込んでいる。新病院の建設に当たっては、基本計画において取りまとめた部門別整備計画や施設基本計画の内容をもとに、医療関係者等の意見を伺いながら、基本設計及び実施設計において、引き続き具体的な検討を進める予定。

整備スケジュールは現時点での見込みであり、基本設計・実施設計において詳細なスケジュールの検討を行うとしている。

高度医療・人材育成拠点の整備スケジュール

出所:広島県「高度医療・人材育成拠点の整備について」(2023年9月15日)

高度医療・人材育成拠点基本計画 (PDFファイル)(6.82MB)

高度医療・人材育成拠点基本計画 概要版 (PDFファイル)(939KB)