東京都の小池知事は所信表明で、経営形態の検討を進めてきた8つの都立病院について「これまで以上に安定的な経営基盤を確立し、地域医療を充実させる」などとして、独立行政法人化することを明らかにする方針である。
独立行政法人化することで医療人材を安定的かつ柔軟に確保できるほか、より機動的な運営が可能になるとして、東京都保健医療公社の病院も都立病院と一体的に独立行政法人への移行を進める考えも表明する。
東京都立8病院
医療資源が少ない地域における「広域基幹型」が2病院。高度な医療を提供する施設が集積し、一部の医療機能が併存する地域における「大都市機能連携型」が2病院。がん、感染症、小児、精神、神経といった「専門機能型」が4病院で構成される。
- 広尾病院(476床)…災害医療/島しょ医療/救急医療(三次・CCU)
- 大塚病院(500床)…周産期医療(M-FICU・NICU対応等)/小児特殊医療(心臓病・腎臓病等)
- がん・感染症センター駒込病院(801床)…がん医療(難治性・合併症併発等)/造血幹細胞移植医療/感染症医療(主に一・二類)/エイズ医療
- 墨東病院(729床)…救急医療(三次・CCU・SCU/周産期医療(M-FICU・NICU対応等)/感染症医療(主に一・二類)/精神科救急医療
- 多摩総合医療センター(756床)…救急医療(三次・CCU・SCU)/精神科救急医療/周産期医療(M-FICU対応等)
- 神経病院(296床)…難病医療(神経・筋疾患)
- 小児総合医療センター(549床)…小児特殊医療(心臓病・腎臓病等)/小児救急医療(三次・CCU・SCU)/小児がん医療/周産期医療(NICU対応等)/小児精神科医療
- 松沢病院(890床)…精神科身体合併症医療/精神科救急医療/精神科特殊医療(医療観察法、アルコール・薬物依存等)
これまでの独立行政法人化の流れ
- 都立病院の赤字の穴埋めに400億円が充てられる構造。
- 都立病院新改革プラン2018…都立病院経営委員会からの報告を踏まえ、今後の都立病院の経営形態について「地方独立行政法人化」を含めた各経営形態におけるメリット・デメリットの検証を行い、経営形態のあり方について、本計画期間中に結論をだす。
独法化に反対の声も
東京保険医協会
災害対策や行政的医療など、東京都が都民に対して義務を持つ事業の費用であり、独法化で解決するのは筋違いである。
https://www.hokeni.org/docs/2019010700020/
都庁職衛生局支部
高度救急や周産期医療、小児救急や精神科救急、感染症対策などありとあらゆる行政的医療を担っており、それらの医療は不採算医療(常に病床を確保する必要があるため、採算性が低く民間病院では行われない医療)とならざるを得ないものがほとんどである。都立病院の経営は経常収支でみれば黒字であり、健全な経営を行っている。
https://www.eiseikyoku-shibu.com/statement2018_04
独立行政法人化した病院事例(厚生労働省所管)
- 国立病院機構…全国47の全都道府県に143病院を擁する。
- 国立がん研究センター
- 国立循環器病研究センター
- 国立精神・神経医療研究センター
- 国立国際医療研究センター
- 国立成育医療研究センター
- 国立長寿医療研究センター
国立病院機構では、国の特別会計時代には、毎年度多額の赤字を出し、独法移行時に承継した長期債務残高(財政融資資金)は7,471億円であったが、経営改革を進めた結果、独法移行初年度から機構全体として収支相償を達成した。
また、独法化後の一般会計からの診療事業向けの国費(運営費交付金)投入はゼロである。平成30年度決算では、繰越欠損金は111億円ほど残るものの、長期債務残高は4,928億円にまで減少している。
※診療業務収益内に補助金等収益36億円、教育研修業務収益内に運営費交付金収益2億円及び補助金等収益6億円、臨床研究業務収益に43億円、その他経常収益内に運営費交付金収益127億円等が含まれている。
財務諸表等…https://nho.hosp.go.jp/disclosure/disclosure_zaimu.html
参考:https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/other/pdf/10464.pdf
今後、東京都がどのように進めて行くかが注目される。
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