人口減少時代の地域医療再編のモデルとなるか
室蘭市内の基幹3病院である市立室蘭総合病院、日鋼記念病院、製鉄記念室蘭病院の再編について、長年協議されてきた「室蘭市地域医療連携再編等推進協議会」において最終合意が得られ、2026年2月25日に正式に公表されました。さらに翌26日に開会した室蘭市議会では、青山剛市長が市政方針を説明し、経営難が続く市立室蘭総合病院を2027年度をめどに閉院する方針に言及しました。閉院に伴い、同院の急性期機能の一部は製鉄記念室蘭病院へ統合される予定です。
今回の再編は、人口減少が続く西胆振地域において、将来にわたり安定した医療提供体制を維持することを目的としています。これまで室蘭市内では、同規模の病院が複数存在し、それぞれが急性期医療を担ってきました。しかし人口減少により医療需要が縮小するなかで、医療機能の重複や医療資源の分散が課題となっていました。そこで三病院の機能を整理し、役割分担によって地域医療を維持していく方針が示されました。
再編後の体制では、高度急性期医療や救命救急を担う拠点として製鉄記念室蘭病院に機能を集約します。一方、回復期医療や慢性期医療、在宅医療との連携など地域生活を支える医療は、日鋼記念病院を中心に確保する方針です。そして市立室蘭総合病院については、移管可能な医療サービスを地域医療機関へ移したうえで、2027年度を目途に急性期機能を製鉄記念室蘭病院へ統合し、室蘭市立病院事業は会計閉鎖される予定となっています。
市立室蘭総合病院は、明治5年に元室蘭で診療所として開設された歴史ある公立病院です。現在の許可病床数は517床で、一般病床369床、結核病床24床、精神病床120床、感染症病床4床となっています。職員数は2025年4月1日時点で758名にのぼり、内訳は医師41名、看護師など391名、その他職員326名です。長年にわたり室蘭地域の医療を支えてきましたが、人口減少や医師確保の難しさ、経営問題などを背景に再編の対象となりました。
室蘭市内には、市立病院のほかにも大規模な基幹病院があります。製鉄記念室蘭病院は347床、日鋼記念病院は348床の病床を有しており、いずれも急性期医療を中心に地域医療を担ってきました。こうした同規模の医療機関が複数存在する構造が、医療機能の重複や症例分散を生み、医療体制の効率化が課題となっていました。
今回の再編の背景には、人口減少による医療需要の変化があります。西胆振地域では今後さらに人口減少が進むと予測されており、急性期医療の需要も縮小すると見込まれています。もし複数の病院がこれまでと同じように急性期医療を担い続けた場合、病床過剰となり、医療資源が分散することで医療の質の維持が難しくなる可能性があります。また医師の働き方改革により、限られた医師で高度な医療体制を維持するためには、医療機能の集約が必要とされています。
今回の再編では、製鉄記念室蘭病院が高度急性期医療や救命救急の拠点病院としての役割を担います。同院はすでに入院医療や救急搬送、手術体制などで地域の中心的役割を果たしており、小児医療や周産期医療など公共性の高い医療分野でも重要な役割を担っています。また2025年12月からは、厚生労働省の「結核患者収容モデル病室事業」の指定を受け、道内民間病院として初めて結核病床を稼働させています。
一方で、市立室蘭総合病院の閉院は、自治体財政の観点からも大きな意味を持ちます。室蘭市は市立病院の運営を支えるため、2026年度予算で病院事業会計負担金や補助金として約23億円を計上しています。人口減少が進む地方都市では、公立病院への財政負担が自治体財政にとって大きな課題となっており、医療機能の見直しや統合が全国的に議論されています。
こうした点を踏まえると、室蘭三病院の再編は単なる地域の医療再編にとどまらず、人口減少時代の地方医療の方向性を示す事例ともいえます。地方都市では、人口規模に対して急性期医療機関が多く存在するケースが少なくなく、医療資源の分散や公立病院の財政負担が問題となっています。今後は高度急性期医療を拠点病院へ集約し、回復期や慢性期医療を地域の病院で担うという「機能分化型医療体制」がさらに進む可能性があります。
室蘭のケースは、同規模の医療機関が複数存在する地方都市において、公立病院の役割を見直す一つのモデルとなる可能性があります。人口減少と医療資源の制約が続くなかで、地方医療はこれまで以上に再編と機能分化を迫られる時代に入りつつあります。今回の室蘭三病院再編は、その象徴的な事例として今後も注目されることになりそうです。









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