兵庫県宍粟市は、新病院整備に係る基本計画案をまとめた。事業費は124億0287万円で、このうち建設工事費93億6515万円、設計監理費4億9721万円、医療機器等整備費22億1100万円。事業スケジュールは基本構想より半年から1年程度遅れる予定としており、今年度下期から基本設計の策定に着手し、23年度下期に実施設計をまとめると報道された。
公立宍粟総合病院は、宍粟郡山崎町、安富町、一宮町、波賀町及び千種町の5町で設立した宍粟郡病院事務組合が、財団法人博愛病院を買収し、昭和 50年 4 月に診療科3科、一般病床 92 床、結核病床 24 床、伝染病床 25 床の「組合立宍粟郡民病院」としてスタートした。
平成 11 年 4 月には「公立宍粟総合病院」と名称を変更し、平成 17 年 4月 1 日の町合併に伴い宍粟市が開設者となり、現在は 12 診療科、一般病床199 床の病院となっている。
公立宍粟総合病院は、市内唯一の病院であり、また播磨姫路圏域北部の中核病院として、地域・住民に開かれた病院として外来診療を行うとともに、2 次救急医療機関として、緊急性の高い患者の受入を行い、急性期医療及び回復期
医療を提供し、地域住民の安心で安全な暮らしを守る役割を担ってきたが、外来診療や検査、手術、入院病棟などの主要部分を担う本館は、建設から 35 年が経過し、施設の老朽化や狭隘化への対応が必要となっており、また、度重なる増改築により患者動線やプライバシー保護、構造設備などの施設機能としても改修が必要となってきている。
このような中、診療機能を維持しながらの現地建て替えの方法を模索していたが、工事中の騒音や振動、塵芥等の影響で患者の安静が確保できないこと、また建設に必要なスペースが確保出来ないことなどから打開策がなく苦慮していたところ、市内の工場閉鎖に伴いまとまった用地確保の見通しが立ち、昨年 1 月に当該工場跡地を病院の建て替えを見据えた用地として取得した。
病院の建て替えにあたっては、地域における中核病院として、また地域完結型の医療提供体制の拠点として、将来にわたって地域住民の命と健康を守り、安心で安全な医療を提供していくため、公立宍粟総合病院が担うべき役割や必
要な医療機能、規模等について検討し、新病院の建物や設備等を整備するための方向性を基本構想としてまとめた。
宍粟市に必要な新病院施設整備の基本的な考え方
- ⑴ 地域の拠点病院として、入院及び通院患者への対応を行う。
- ⑵ 急性期医療から在宅に向けた回復期医療、小児、周産期医療及び災害対応医療を担う。
- ⑶ 在宅医療を推進する上で診療所等の後方支援の役割を担う。
- ⑷ 高度急性期医療を提供する病院と自宅療養の間をつなぐ役割を担う。
- ⑸ 職員が誇りとやりがいを持ち、働きやすい病院職場をつくる。
- ⑹ 持続的な健全経営を実現できる病院の実現に努める。
新病院の役割
新病院が地域包括ケアシステムの基幹病院として、また地域の拠点病院として取り組む主要な役割を次のとおり示している。
⑴ 救急医療
宍粟市における1次救急は、宍粟市医師会に所属する 医療機関と総合病院が担い、休日には当番医制度を実施しており、この体制を維持します。
2次救急では、地域の医療機関と連携して、入院や手術を要する救急患者をスムーズに受け入れられるように体制の整備を図ります。また、総合病院で対応できない高度・専門的な3次救急は、中播磨地域の高度急性期医療機関との連携強化を図ります。
⑵ 小児医療
小児科救急対応病院群輪番制を総合病院が担っています。医師確保に努め、小児救急医療体制を強化するとともに、地域の小児科医師等との連携も強化します。また不要不急の受診者減少のための普及啓発を推進します。
⑶ 周産期医療
平成 30 年 11 月に播磨姫路圏域の周産期医療協力病院に指定されており、総合周産期母子医療センターと連携し、ハイリスク妊産婦等に対する二次的医療を担うとともに、引き続き安定した周産期医療が提供できるよう体制整備に努めます。
⑷ 一般医療
市内の診療所・開業医との連携を図りながら、複数の合併症を有する患者等に対し、総合的な医療サービスを提供します。
⑸ 感染症医療
感染症に弱い高齢患者、合併症患者等の感染症の伝播予防及び新型コロナウイルス等新興感染症対応に配慮した機能を確保します。
⑹ へき地医療
へき地医療拠点病院に指定されており、波賀診療所及び千種診療所への医師派遣を継続して行います。
⑺ 病診連携の推進
市内の診療所・開業医との機能分担を図り、入院が必要な場合や、より専門的な治療・検査が必要な場合などは、総合病院がそれらを受け持ち、病診連携によって患者情報の共有を図り、効率的、継続的に安心して治療を受けられる体制づくりを推進します。
⑻ 介護サービスとの連携
高齢者等の入退院がスムーズに行われるよう、新病院の地域連携部門と 市地域包括支援センター、介護支援事業所の連携を図ります。
⑼ 在宅医療の推進
地域包括ケアシステムにおいては、かかりつけ医による在宅医療が地域住民のよりどころとなります。総合病院においては、かかりつけ医の後方支援体制を確立するとともに、かかりつけ医と連携し、外来通院が難しくなった患者が安心して暮らせるよう医療的支援を行います。
⑽ レスパイト入院
医療的支援を必要とする在宅療養患者の介助者の身体的・精神的負担を軽減するためのレスパイト入院を受け入れます。
⑾ 健康増進、疾病予防
市民の生活習慣病の予防による健康寿命の延伸と予防医療への啓発となる市民講座など地域への取組を推進します。
⑿ 災害対応医療
宍粟市地域防災計画において災害時の重要施設として指定された災害対応病院として、災害に強い施設を整備し、多数の傷病者の受け入れと医療提供ができる環境を構築します。
検討委員会および市民からの意見
⑴ 地域包括ケアシステムのネットワーク拠点機能
市内の診療所や介護事業者等と連携し、多職種のスタッフが集い 、情報共有や人材育成を図るための地域包括ケアシステム交流拠点機能
⑵ 訪問看護等の在宅医療
訪問看護ステーション機能の充実と通院困難な方への訪問リハビリテーション等による在宅医療の推進
⑶ 健診センター機能
疾病の早期発見や重症化予防のための健診センター機能
⑷ 精神疾患への対応
児童思春期の精神医療及び障がい児の発達支援への対応及び近隣の精神科病院等との連携強化による様々な病態の精神疾患への対応
⑸ 新興感染症の市内流行時の対応
新型コロナウイルス等新興感染症の市内流行時における関係機関との連携による医療提供体制の確立
⑹ その他の機能
病院機能以外で、病院と併設することにより機能を発揮できる施設又は地域振興につながる施設の整備
概算事業費
区分 | 事業費算 | 出根拠等 |
(1)建設工事費 | 9,365,157 | |
⇒土地造成費 | 408,366 | 積算より設定 |
⇒ 建築工事費 | 8,301,370 | 病院新築面積 15,480 ㎡ほか多目 的ホール棟、研修医等宿舎、院内保 育所建築工事等 *病院の建築単価及び延床面積は、 近年の整備事例から算出 〔単価:495 千円/㎡(税込)〕 〔面積:86 ㎡/床〕 |
⇒ 外構工事費等 | 655,421 | 外構工事、電気引込工事 |
(2)調査費 | 53,097 | 測量費、地質調査費、造成設計費 |
(3)設計監理費 | 497,219 | |
⇒ 設計監理費 | 484,679 | 設計、工事監理等に係る業務報酬基準に基づく試算 |
⇒ 土木工事監理料 | 12,540 | 積算より設定 |
(4)医療機器等整備費 | 2,211,000 | |
⇒ 医療機器購入費 | 1,771,000 | 事例から設定 |
⇒ 医療情報システム整備費 | 440,000 | 事例から設定 |
(5)コンサルタント業務委託料 | 107,800 | 医療コンサルタント業務、コンストラクションマネージメント業務 |
(6)什器備品購入費 | 138,600 | 事例から設定 |
(7)移転費 | 30,000 | 事例から設定 |
合計 | 12,402,873 |
新病院整備予定地
⑴ 概要
- 所 在 地:宍粟市山崎町中比地 39 番 6 ほか
- 敷 地:38,678.80 ㎡のうち、必要面積
⑵ 法的要件
- 都市計画区域区分:非線引き都市計画区域
- 用途地域:無指定
- 建ぺい率:60% ・容積率:200%
- 道路斜線:適用距離 20m、勾配 1.5
- 隣地斜線:立上り 20m、勾配 1.25
- 北側斜線:非該当 ・絶対高さ制限:なし
- 日影規制:なし
公立宍粟総合病院の経営状況
平成27年度の病院事業収益37億円から平成30年度にかけ同程度で推移していたが、令和元年度に事業収益が40億円まで増加し利益がこれまでの1.5億円前後の赤字から3,800万円の黒字となっていることから、新興感染症関連の補助等による増収増益と推察される。
基本設計では総事業費は155.7億円報道
総事業費は約155億7千万円で、病室などが入る「病院棟・会議室棟」は4階建て(延べ床面積約1万7千平方メートル)とすると公表されている。(神戸新聞2023年2月28日)
出所
コメントを残す