岩見沢市の新病院基本設計は梓設計

岩見沢新病院建設計画
岩見沢新病院建設計画

北海道岩見沢市は、新病院建設工事基本設計業務に関する公募型プロポーザルを実施した結果、株式会社梓設計を優先交渉権者と決定したことを公表した。次点は株式会社久米設計札幌支社。4者が参加表明を出していた。

急性期医療や救急医療を中心とする総合的な診療体制を担うとした新病院の病床規模は462床。病棟構成は、一般病棟が8病棟310床、回復期リハ病棟40床、緩和ケア病棟20床、SCU8(脳卒中集中治療室)6床、HCU(高度治療室)12床、感染症4床、精神病棟70床。

乳幼児から高齢者までのさまざまな医療ニーズに対応できる総合的な診療体制を整備するため、必要機能を網羅的に取り込んでいる。

岩見沢市の新病院の病棟構成 462床

手術部門は、バイオクリーン手術室・日帰り手術室を含む全7室を整備。また、手術支援ロボットによる内視鏡手術など、低侵襲で安全な手術を実施する。

血液浄化センターはかなり大規模で、65ベッド程度の透析室を設ける。

健診・検診機能を強化するため、健康診断部門を新病院内に併設し、病院内の検査・画像診断機能を活用する。健康診断の胃内視鏡検査にも対応した内視鏡検査室を5室程度整備。

南空知医療圏の災害拠点病院として、大規模災害発生時にも医療活動が継続して行えるよう、ライ
フラインの確保をはじめ災害に強い施設・設備や体制を整備する。

近年、一般病院と精神病院の連携必要性が求められている中、新病院ではこれまでの精神科救急医療や身体合併症を有する精神疾患患者を診療できる体制を維持する。また、近隣の精神科医療機関や福祉施設などとの連携を強化し、地域移行や早期社会復帰を促進していく。

その他の整備・運営計画

医療機器・什器備品整備計画

  • 新病院でも継続して使用できる機器の移設や部門間での共同利用により事業費を抑制
  • 新病院開院時に投資額が集中しないよう、調達時期を分散

情報システム整備計画

  • 電子カルテシステム(H29導入)は令和7年度に更新し、新病院でも引き続き運用
  • システム更新後、中央労災病院の情報システムとのデータ統合を実施
  • ICT/IoT・AI・RPAなどの次世代先端技術を活用したスマートホスピタルを目指す

物流管理計画

  • 各部門へ医薬品・診療材料などを安定的に供給するため、物流管理システムで適切に物品を管理
  • SPD業務委託による人手搬送を基本に、機械搬送設備の導入も検討

業務委託計画

  • 経営や業務効率化の観点から、委託範囲の見直しや内製化を検討
  • 将来の人口減少による労働力不足を見据え、関連性の高い委託業務の包括化も検討

人員計画

  • 新病院の診療機能・規模や医療体制を実現するために必要となる医療スタッフを確保
  • 職員が働きやすい環境の整備

岩見沢新病院の事業費は344億円

基本計画の段階では総額 344 億円が見込まれている。資材価格・労務単価など建設物価の変動などにより事業費は変更となる可能性があるため、社会情勢も踏まえながら、基本設計段階で事業費を精査するとしている。

項目金額備考
(1)設計・監理費14.6 億円(2)建築工事費×6%
(2)建築工事費242.8 億円延床面積40,470㎡×60万円/㎡(直近の事例を参考)
(3)外構工事費5.2 億円外構面積35,000㎡×1.5万円/㎡ ※駐車場1,000台+外構
(4)解体経費11.9 億円現施設(新棟除く・職員宿舎含む)延床面積23,765㎡×5万円/㎡
(5)医療機器45.0 億円現有品調査や他事例を踏まえ、更新及び新規導入費用を積算
(6)什器備品5.0 億円什器・備品・家電類・看護備品・鋼製小物を含む
(7)情報システム14.2 億円開院時(2期)の整備費(両病院システム統合・ネットワーク工事を含む)
(8)事務費など3.3 億円開院支援業務委託、開院準備関連費用など
(9)移転費など2.0 億円医療機器移設、患者移送など
全体事業費344.0 億円消費税及び地方消費税を含む

また、収支シミュレーションの主な条件設定として、病床別の入院単価は以下の通り設定している。

  • 一般病床:65,445 円
  • 精神病床:20,431 円
  • HCU:311,109 円
  • SCU:272,895 円
  • 緩和ケア病棟:49,260 円
  • 回復期リハビリテーション病棟:37,623 円

外来診療単価は、精神神経科以外:26,300 円、精神神経科:12,000 円。

新病院の事業スケジュール

施工者を早期に確保するため、実施設計段階から施工者が技術協力で参画する「ECI方式」を採用。ECI方式を前提に令和10年春の開院を目指す。竣工後3か月以上の開院準備期間を確保する。

新岩見沢病院は令和10年の開院予定

設計者選定の評価項目・点数

評価項目は、業務実施方針(10点)、風雪対策(5点)、アプローチ(10点)、駐車場計画(10点)、コスト意識(15点)、計画のレベル・実現性(20点)、プレゼンテーションの内容(20点)、そして価格点(10点)の合計100点。

B者は一次審査で落選となり、3者での評価となった。A者およびC者が58点前後であったのに対し、D社は86点と高い評価を得た。

新岩見沢病院の設計者選定 評価項目
株式会社 梓設計 技術提案書
株式会社 梓設計 技術提案書
株式会社 久米設計札幌支社 技術提案書
株式会社 久米設計札幌支社 技術提案書

新病院計画の背景

岩見沢市立総合病院は、昭和 2(1927)年の開設以来、南空知医療圏における地域センター病院として、高度医療や救急医療、小児・周産期医療等を提供。

令和 2 年 2 月、北海道から、市立総合病院と北海道中央労災病院の両院に対し、機能集約化など再編統合に向けた論点提起がなされ、令和 3(2021)年 6 月には両病院の今後のあり方について検討した結果を報告書としてまとめた。

岩見沢市立総合病院

所在地〒068-8555 北海道岩見沢市9条西7丁目2番地
診療科目内科、消化器内科、小児科、外科、整形外科、産婦人科、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿器科、精神神経科、麻酔科、脳神経外科、皮膚科、放射線科、形成外科
病床数484床(一般365、感染4、精神115)
職員数523人(医師52人、研修医4人、看護師322人、薬剤師15人、その他職員130人)
敷地面積16,889㎡
建築面積6,401㎡
延床面積30,927㎡

北海道中央労災病院

所在地北海道岩見沢市4条東16丁目5番地
診療科目内科、循環器科、外科、整形外科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、歯科口腔外科、病理診断科(12診療科)
病床数199床
職員数
敷地面積75,600㎡
建築面積
延床面積24,123㎡

南空知医療圏とは

北海道の夕張市、岩見沢市、美唄市、三笠市、南幌町、由仁町、長沼町、栗山町、月形町で構成され、人口規模15.2万人(2020年)。高齢化率はすでに40%程度まで上がっており、医療需要は2020年を100として、2045年には69まで下がると推計されている。(※)

※出所:日本医師会 地域医療情報システム

出所:新病院建設工事基本設計 公募型プロポーザルの審査結果について

参考:株式会社梓設計技術提案書株式会社久米設計札幌支社技術提案書

岩見沢市新病院建設基本計画 (PDF:6,723KB)