助産院の課題

鹿児島中央助産院(鹿児島市伊敷6丁目)
鹿児島中央助産院(鹿児島市伊敷6丁目)

鹿児島中央助産院(鹿児島市伊敷6丁目)が、初産婦の受け入れを6月から休止すると報道された。

  • 助産院は助産師が分娩(ぶんべん)や産前産後のケアをする施設で、帝王切開などの医療行為は行わない。
  • 医療法で助産院は嘱託医と、緊急時に対応する嘱託医療機関の確保が義務づけられている。(参考

助産所の利用者は結局病院に流れる

同院の嘱託医療機関が昨年12月から出産を中止。「経産婦に比べ、医療介入が必要になるケースが多い」として初産婦の受け入れを断念したとのこと。

市中心部には産科クリニックがあるものの、医療介入に備えた連携が出来なくなったということは、近隣の産科クリニックにとっても他人事ではない。

同院による初産婦の受け入れ停止の影響は、他の助産院やクリニックに流れていくが、帝王切開既往、多胎出産や逆子出産、婦人科疾患や合併症がある妊婦さんは助産院を利用できないため、結局近隣病院に流れていくことになる。

一方で病院では「産科単独で収益化は難しい」と言われることもあり、積極的に受け入れたくても受け入れすることができない事情もある。

分娩実施施設は減少、帝王切開比率は上昇

最近の分娩状況について、分娩実施施設総数は2008年から2020年にかけて2567施設から1945施設へと、622施設減少している。(出典:厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」

分娩実施施設総数は2008年から2020年にかけて2567施設から1945施設へと、622施設減少。

分娩実施施設が減少する一方で、帝王切開の比率は徐々に高まっている。一般病院は年間4万件を下回る分娩件数であるが、帝王切開件数は1万件を維持しており、2008年の23.3%から2020年には27.4%と4ポイントも上昇している。

また、一般診療所の帝王切開率も同1.7ポイント上昇しており、分娩件数は減少にあるが、帝王切開の件数は一定程度維持されており、全体に占める帝王切開の比率は上昇傾向にある。

院内助産・助産師外来の必要性

日本看護協会では院内助産・助産師外来の必要性を認識しており、院内助産システム推進に関連する情報発信と研修開催などを行っている。

院内助産システムとは、緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、妊娠から産褥 1 か月頃まで、正常・異常の判断を行い、助産ケアを提供する体制をいう。

また、助産師外来とは緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が産科医師と役割分担をし、妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、健康診査や保健指導を行うことをいう。ただし、産科医師が健康診査を行い、保健指導・母乳外来等のみを助産師が行う場合はこれに含まない。

助産師の適正配置

日本看護協会「助産師の必要人数算出に関する提案」(平成 27 年 3 月)によると、助産師の配置は「産婦人科又は産科においてはそのうちの適当数を助産師とするもの」(医療法第 19 条)とされ、分娩件数に必要な助産師の配置について示されていない。配置に関する規程がないため、一般病棟入院基本料において助産師が看護師と区分されずに、定められた看護職員配置基準に従って配置されており、妊産婦や新生児へのケア提供体制に影響すると考えられる。

助産師必要人数の算出式は「1 年間に助産師が提供する助産師業務にかかる時間÷助産師 1 人の年間総労働時間」で算出するものとしている。

分娩件数は平成 24 年の年間出生数 1,037,231(平成 24 年人口動態統計)を基にしているものであるが、①助産師の業務量、②分娩件数、③妊婦のリスク、④助産師の年間総労働時間で算出した助産師の必要人数は、 38,938 人 であった。

試算にあたり業務分析を詳細に行ったうえで前提条件化しており、病院における助産師の試算にも活用できるかもしれない。

出所:日本看護協会「助産師の必要人数算出に関する提案」(平成 27 年 3 月)

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