医事業務アウトソーシングの経営インパクト

千葉県東金市の地域中核病院「東千葉メディカルセンター」
千葉県東金市の地域中核病院「東千葉メディカルセンター」

千葉県東金市の地域中核病院「東千葉メディカルセンター」の不適切運営問題で、窓口での患者応対など全般的な医事業務が、金額の算定根拠が分からないまま千葉市の業者に委託され続けていることが分かったと報道された。

 第三者委員会の報告書によると、同センターは医事業務を担う業者と2018年5月、月額910万円で随意契約した。その後、診療報酬明細書点検業務などが追加されたが、契約は書面ではなく口頭で済ませていた。外来患者数の増加を理由に委託料は段階的に増え、現在は月額2813万円。金額の算定基準は不明という。

読売新聞オンライン

医事業務のアウトソーシング(外部委託)は規模の大小を問わず多くの病院が採用しており、医事業務に関連する人件費の変動費化や採用・育成にかかる費用の低減等がメリットとされる一方、診療報酬請求や医師事務作業補助などは病院経営に係る分野でもあり、医事に関するノウハウがいつまでも自院に蓄積されず、医事業務のアウトソーシングに依存し続けるという弊害があります。

医事業務を外部委託するには、医事業務に関する業務区分の設定や委託のための入札仕様書作成など、専門的かつ地道な業務が必要とされますが、コストを含め病院要望を一方的に盛り込んだ仕様書ではどの医事委託事業者も応札しないため、事前に事業者へのサウンディング(意見収集)を行うことがあります。

サウンディングでは病院が外部委託したいと考える業務と医事委託事業者が「受けられない」と考える業務のすり合わせが行われることがありますが、大手委託事業者を始め、複数の事業者との折衝は病院事務方にとって大きな負担であることも事実です。

業務負担が大きい一方で、地域によっては大手委託事業者間で暗にすみ分けが発生していることもあり、契約期限ごとに病院の医事委託業務の入札を行っても同じ事業者が応札することもあり、なかなか病院主導で医事業務をコントロールすることが難しいこともあり、本件ではそのような背景もあり、何となく口頭で随意(継続)契約を続けたのではないかとも推察されます。

同センターの幹部は「医事業務は多岐にわたり、急な変更は現場が混乱するため」と説明する。
同センターは新たに医事業務を担当する事業者を公募することを決めた。病院運営の実績などを踏まえ、委託金額の上限は月額2200万円とし、年間約7300万円の経費削減を進めるという。

同上

医事業務は病院経営に重要な機能となるため、コスト削減されるという考えだけで外部委託化することは経営における武器をひとつ失うことにつながります。

自院で人材を育てながらシステム側に投資を行い、再び内製化しようという動きも進みつつありますが、一方でこの流れはこれまで医事業務を受託してきた企業にとっては厳しいものとなるため、医事ではない病院業務の取り込みが必要であると示唆されます。