医薬品卸がまた談合

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独立行政法人「国立病院機構」(東京都)が運営する九州の病院に対し、公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで医薬品卸大手など福岡県内の6社に対し、立ち入り検査に入ったと一斉に報道された。

2020年には医薬品卸大手4社が独立行政法人「地域医療機能推進機構」(東京)発注の医薬品入札で談合したとされる事件で、公正取引委員会は大手卸業者3社と、各社の幹部らを、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で検事総長に告発されている。

病院経営は規模が大きくなるほどガバナンスを聞かせながら運営することが難しいという特徴がある。医薬品や診療材料などの資材調達部門は用度係などの病院事務部門が担う事が多いが、人材が潤沢ではない上、特に公的病院では業者と職員の癒着を防ぐ視点から、定期的に異動が発生しノウハウが蓄積しないという背景がある。

その中、まとめて一括調達をすれば病院側の価格交渉力が増し、卸業者に対するボリュームディスカウントパワーが働く(と考えられる)ことから、病院数が多い法人ほど一括調達を行うことになる。一見すると効率化が進んでいるように見えるが、実際にはこの裏で卸業者が談合していたという構図が推察される。

卸業者間では●●地区は当社、別の地区はB社など支店レベルで住み分けが話し合われていたと想像されるが、まさに「ゲーム理論」(複数の主体が相互依存関係のもとで,いかなる行動をとるべきかを考察する理論)の典型と考えられる。どの業界でも卸業者は中間流通の効率化を担うという機能を有する一方で、利益率が非常に低いという特徴があり、競合他社とは住み分け(談合)したくなるのだろう。

病院側は一括調達だからと安心するのではなく、調達状況について別法人と定期的に情報交換する等の工夫が必要となる。