滋賀県野洲市が、野洲市総合体育館横市有地(野洲市冨波甲・旧温水プール跡地)に進めている新野洲市民病院プロジェクトが着々と進行しており、2024年度予算では設計費が計上された。
新野洲市民病院は、現病院199床と同じ病床規模だが、維持期病床(医療療養病床または障がい者病床)を一般病床に変更している。新病院は令和8(2026)年度竣工・開院を目指す。
今回、新病院は設計と施工を一括発注する「デザインビルド」方式による公募となったが、病院建築費が高騰する中、予定価格96.7億円に対し落札金額は82.2億円と、14.5億円(15%)も下回る結果となった。落札者は株式会社熊谷組を代表とする共同体グループ。
価格審査は以下の通り。入札価格においては、戸田建設・石本建築事務所グループと42万円の差しかなかった。
グループ名 | 入札価格 (予定価格:9,670,000,000 円) | 価格点 (20.00 点満点) |
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熊谷組関西支店・奥田工務店特定建設工事共同企業体・内藤建築事務所・滋賀県建築設計 監理事業協同組合設計共同体グループ | 8,219,000,000 円 | 20.00 |
戸田建設・石本建築事務所グループ | 8,219,420,000 円 | 20.00 |
清水・桑原特定建設工事共同企業体 | 8,415,000,000 円 | 17.30 |
鴻池組・安井建築設計事務所グループ | 8,580,000,000 円 | 15.03 |
総合評価の講評は以下の通り。
- 延べ床面積が最も大きく、各スペースを広く確保していただいてました。(他社と比べ延べ床面積が 500~1,000 ㎡程度の差がついていました)
- スペースが広いことから、各病棟の機材庫、管理部門のスペースを確保しやすいというメリットがあります。
- 新病院の建物が体育館と平行した長方形であることから、安定感がある配置になっています。
- 病棟、外来部門、管理部門、中央診療部などの各部門の配置計画が良かったです。
- 個室率が最も高い点も、今後色々な使い勝手が良くなる可能性があります。
- 送電線の影響に配慮した病棟設計が特色です。
- 救急車が南側市道から短い距離で救急部の建物に入ることができる点が他社に比べて特色があり良かったです。
- ライフサイクルコストに対する提案は書かれてはいるものの、プレゼンではあま り触れられていませんでした。CASBEE-B+と他社に比べてこの点のランクが低い計 画案でした。
- 建物構造上で、壁の断熱、窓面積、清掃などの取り組みが不明でした。
- 外観について、病棟階とそれ以外の階で色を分けて配慮はあるものの、川側に上階まで立ち上がっていることが気になりました。
- スタッフゾーンが比較的まとまっているのが良かったです。
- 各階のバルコニーだと思い、避難に関わる質疑を行ったが、2階の輪郭線でした。避難階段について、法規的にクリアできていても、選定された場合は、水平区画での一次避難なども考慮しながら、消防との確認をしていただきたいです。
- 急性期 60 床を1フロアに集約しており、明解で良かったです。
- 全体的に動線・ゾーニングに大きな問題がなく、平面配置の全体的なバランスが良かったです。
- 基本設計時の対話による進め方の提案は良かったです。
- 避難階段等平面プランについては見直しの必要があると思われます。南側にも上層階までの階段の設置を検討いただきたいです。
- 環境性能について、CASBEE-B+は要求水準を満たしているものの、他社に比べると劣っています。
- 外観デザインの配慮が少ないです。緑化も含めさらなる検討をお願いしたいです。
- 敷地を十分に使用できていて、全体的に広さに余裕を感じる計画です。動線も明確であり、各階の配置も上下階の関係を上手く考慮していると感じました。
- 鉄塔への配慮も含めて、6 階も病棟として計画している点が良いと感じました。
- 救急動線について、狭いものの、確保されている点が良かったです。
- 個室率が多いというのは新興感染症を経験した中で、十分にインパクトのある良い計画であると感じました。
- 患者の生活の質、職員の働く環境としては、他社と比べプラスに感じることができます。
- ライフサイクルコスト、地域貢献に対しての提案が不足していました。
- 各部門とのヒアリングを4回以上計画している点が良かったです。
- 災害時に体育館を病院と連携して活用する想定をしている点が良かったです。
- リハビリと回復期が同じフロアであることが良かったです。
- 急性期を内科と外科に 30 床ずつ、2単位にわけているのが良かったです。
- 院内の検査の待合や動線も良かったです。
これから建て替えを目指す中規模病院にとって、予定価格を大幅に下回る入札価格は魅力的であるが、厳正かつ透明性の高いプロポーザルによる競争環境の醸成が必要である点、建築費の高騰による不落回避を目的とした初期計画の見積もりの甘さにも注意したい。
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