大阪府藤井寺市の市立藤井寺市民病院、神奈川県川崎市の聖マリアンナ医大東横病院がそれぞれ閉院することが公表されている。
2023年も医療機関の閉鎖や民事再生が続いているが、その理由は業績不振や投資トラブル、後継者問題など様々。
2024年には診療報酬改定も控えるが、あらゆる物価高が病院経営に影響を与える中、コロナ補助金で赤字を補填してきた医療機関、業績拡大を狙い積極投資に動く医療機関、医療業界の企業などの動向は引き続き注視したい。
千葉県心和会 投資トラブルで民事再生 負債132億円
4月には、千葉県内で八千代病院など複数の病院を経営する医療法人社団心和会が東京地裁に民事再生法の適用を申請した。負債総額は約132億円。前理事長による積極的な施設の新規開設により業容は拡大をたどり、2022年3月期には売上高97億5,977万円を計上していた。
- 新たに開設したリゾート型医療関連施設がコロナ禍の影響で苦戦するなか、多額の減価償却負担などから損益面は不安定に推移し、設備投資に関わる有利子負債も膨らんでいた
- 前理事長時代の積極的な設備投資や不動産投資に関わるトラブルにより外部の第三者が介入し、度重なる詐欺・恐喝などを受け続け、抗拒不能の状態に陥った結果、多額の資金流出が発生
- 簿外債務が増加したうえ、ここにきて再度の資金ショートを起こし、自力での再建が困難となった
出所:医療法人社団心和会プレスリリース「民事再生手続申立てに関するお知らせ」(令和5年4月4日)、東京商工リサーチ
荒川区加藤産婦人科 資金繰りで閉院
5月には、東京都荒川区の加藤産婦人科医院(病床数15床)が突然閉院した。荒川区によると、閉院の理由は資金繰りの悪化と院長の体調不良という。同医院は今月8日にホームページで閉院を告知。理由など詳細な説明はなく、急な閉院だったという。
出所:荒川区「加藤産婦人科医院の閉院に伴う区の対応等について」
埼玉県 行定病院 閉院
7月には、埼玉県川越市の行定病院(57床)が閉院している。内科、呼吸器科、消化器科、循環器科、糖尿病科、整形外科、眼科を標榜しており、眼領域では水晶体再建術1,500件、緑内障手術253件などを行っていたが、直近の病床稼働率は50%程度に止まっていた。
歯科医院運営の友伸會 民事再生 負債37億円
9月に入り、歯科医院を運営する医療法人社団友伸會が民事再生法の適用を申請した。「東京プラス歯科矯正歯科」などの院名で、東京、神奈川を主体に、新規開院や歯科医院の譲り受けにより業容を拡大、29施設まで拡大させた。2021年8月期には年収入高約86億3300万円を計上していた。
マウスピース矯正「キレイライン矯正」の提供開始を機に、矯正治療を中心とした自由診療にシフトしていたが、収益面に課題があったことから来院患者数が落ち込み、業績が悪化。不採算医院の閉鎖や固定費削減など経営改善に努めたものの、自主再建を断念した。負債は約37億円。治療中の患者については、治療の継続、サービス提供をするとしている。
同法人は、9月29日付でスポンサー支援による組織改編をウェブサイト上で公表している。
出所:帝国データバンク
市立藤井寺市民病院 経営悪化と老朽化 閉院予定
また、長年、藤井寺市の地域医療の中核を担ってきた市立藤井寺市民病院(98床)は、医療を取り巻く状況が大きく変わる中、病院運営の継続が難しい状況が続き、病院建物の老朽化も重なったため2024年3月で閉院することを決めている。
出所:市立藤井寺市民病院HP
川崎市聖マリアンナ医大東横病院 経営悪化 閉院予定
川崎の聖マリアンナ医大東横病院も同様に、2024年3月で閉院することが報道されている。急性期病院として地域医療を担ってきたが、少子高齢化を背景に患者の受け入れ数が減少するなどして経営状況が悪化していた。
出所:カナロコ
北海道治恵会 破産閉院 負債6.5億円
北海道北見市で北見中央病院(40床)などを運営する治恵会は50年以上続く病院であったが、9月末で外来患者の受け入れを停止した。現在入院中の患者については転院手続きを行い、終了後に破産を申請する予定。
2012年8月に介護事業を移管し、「くんねっぷ治恵クリニック」を閉院したことで、2013年8月期の売上高は9億1087万円まで減少。その後も診療体制の変化や施設の老朽化等もあって減収傾向が続いていた。
2022年から院長が不在であったことや外来患者が減ったことにより、先行きの見通しが立たず、今回の措置となった。
出所:東京商工リサーチ
下関の豊北病院
2024年2月になり、山口県下関市の豊北病院が閉院となった。資金難が原因。資金難で看護師への給与が未払いで取引先への支払いも滞っていた。病床数は58床。
出所:NHK
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